"> 解明Polka 息継ぎ 忍者ブログ
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某歌ロイドにはまった人がちまちま書いているようです。ブログ名で好きCPがわかる罠

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2月って28日までしかなかったんですねもう3月ですか管理人ですお久しぶりです。

2月終わっちゃった…(色々スルーしちゃった的な意味で)

もう暫く潜ります。お茶を濁す感じで短めのぽるかを置いていきますね。
何と言うか、オチが来いみたいなオチになっちゃった気もしますが、
まあ、もう、気にしたら負けだと思うことにしました←
ちょっと前に勢いで書いて放置していたのを手直ししたので、季節感がちょっとさかのぼる感じになります。

それにしてもツンデレって難しいですね! 気づくとデレデレさせちゃったりとか、うまくツンしてくれてる気がしなかったりとか、もっとツンデレ研究するとどうにかなるものでしょうか。

なんでもバッチ来いぽるか美味しいよぽるか読んでやろうじゃないか! って方は、続きからどぞです。



吐く息も凍りつきそうな、しんしんと冷える昼下がり。
掌の上に真っ白な雪のかたまりを乗せて、ルカは隣家の門をじっと見つめていた。


ゆきうさぎ



時は少しさかのぼり、それはその日の朝のこと。
昨晩から降りしきる雪のせいで、今日唯一の仕事が延期になって、珍しく一日オフになった。兄弟たちはみな出払った、一人きりの家の中で、ルカはぼうっとちらちらと舞う粉雪を見つめていた。
今度歌う歌の練習、自主トレーニング等々、やろうと思えばやるべきことはいくらでも見つかった。
けれどルカは、白銀の世界に舞い降りていく雪をじっと見つめていた。

ルカは、あまり雪遊びをしたことがなかった。
もともと雪の少ないところなので、そもそも遊ぶ機会がなかったし、少し積もった日にミクやリンレンに誘われて遊びに出た時も、雪合戦で壮絶な試合を繰り広げていた双子を眺めながら、ミクから雪うさぎの作り方をちょっと教わった程度だった。

「ゆきうさぎ……」

真っ白の丸っこいフォルムと、赤い実の瞳、笹の葉の耳で出来上がったその姿を思い浮かべ、ルカはふと、雪うさぎを作ってみようかという気になった。
今日の雪は柔らかいから、きっとふわふわの雪うさぎになるだろうと思うと、なんとはなしに心が躍った。
思い立ったが吉日と、上着を掴むのもそこそこに、ルカは家の外へ飛び出した。

そしてルカは、自分の不器用さを思い知る。
雪を手に取ったはいいものの、力を入れすぎてカチカチにしてしまう。
何とか加減を覚えてみても、脳裏に描かれるあの丸っこいフォルムを再現することは、思った以上に難しい。
理想が高すぎるのかとも思ったが、ミクの手の中で形作られたかわいらしい姿を思えば、妥協という選択肢はなかなか選べるものではなかった。

日が頂点から傾くころ、ようやく少し不格好ながらも納得がいくものを作り上げ、ルカは満足げに息をついた。
後は、赤い目と笹の耳を付けるだけ、とルカは顔を上げ、そして愕然とした。家の庭には、あの赤い実も、笹も、植わってはいなかったことに思い当たったのだ。
どうしたものかと周囲を見回していると、ふと柵の向こうの隣家の庭に目がとまった。
向こう側の塀際に並んで生えている笹、庭の角に植えられた木に実る赤い小さな実。ルカが求めているものがそこにあった。

そして話は冒頭に戻る。

迷わず隣家の門の前に立ったはいいものの、呼び鈴を押す手前でルカの手は止まった。
何せその家は、あの紫の侍崩れの住む家である。一人称が拙者で、中途半端な侍言葉を喋るその男を、ルカは普段から避けるようにしている。
その男の住む家に、わざわざ赤い実と笹の為だけに尋ねるのは、どうにも居心地が悪かった。からかわれるかも知れないと思えば、余計に呼び鈴を押す気は失せてしまう。

家には他に、その妹であるグミも住んでいるはずで、彼女が応対してくれるのならば、ルカは迷うことなく呼び鈴を押すだろう。
家の明かりと窓際の人影から、留守ではないのは確認済み。残る問題はどちらが呼び鈴に応対するかだが、それがわからない限り呼び鈴を押すことはできないのだ。
もちろん、黙って庭に忍び込み失敬してくるなどもってのほかだったし、呼び鈴を押すべきかと悩み始めた時点で、ルカの頭からは他の場所に探しに行く、という選択肢はきれいさっぱり消え去っていた。

逡巡し続けるルカは、すっかりその問題に気を取られて、だから背後に立った人影にも全く気付かなかった。

「ルカ殿、我が家の前に立って、いかがなされたのか?」
「!?」

かけられた声にばっと振り返ったルカの背後には、案の定ルカを悩ませた元凶その人が立っていた。
その男は、とっさに顔をしかめたルカに、何を思ったのかにっこりと笑い返す。

「もしや拙者に御用であったか?」
「まさか」

バッサリと相手の言葉を切り捨てながら、ルカは激しく後悔する。
こんなことになるのならば、さっさと呼び鈴を押して用を済ませてしまえばよかった、と。
そんなルカの内心を知ってか知らずか、碧の瞳はルカの掌の上の雪のかたまりをとらえた。
はっとしたルカが後ろ手に回しても時すでに遅し、首が傾げられるのに従って紫の長髪が揺れた。

「ルカ殿、それは?」
「な、なんでもありません!」
「我が家の笹に御用であるか?」
「なぜそれを……!」

図星を指されて口を滑らせたルカは、男が愉快そうに笑いを堪える様に、体を震わせた。つんと顔を逸らせば、楽しそうな響きをはらんだ声が耳に届いた。

「そんなに熱い瞳でじっと見つめていれば嫌でもわかるであろう」
「い、いつから」
「ついさっきでござる」

ルカのものよりも、ひとまわりもふたまわりも大きい掌が、門を開く。
横目でこっそり伺っていたつもりが、ばればれだったようで、その掌はそのままルカを手招いた。

「雪うさぎを作るのだろう? 笹と南天が要り様ならば遠慮なく持って行って下され」
「なんてん」
「赤い実のことでござるよ」

大変癪なことではあったが、どうせもうばれてしまったことである。
腹をくくり、ルカは手招きに応じて、門の内に足を踏み入れた。
ぷつん、と軽い音と共に笹の葉を摘んで、大きさも揃い形も整った葉を2枚乗せた掌は、そのままルカに差し出された。

「どうぞ」
「……どうも」

憮然としながらもそれを受け取り、ルカは左右のバランスを見ながら、雪のかたまりに耳となる葉を二枚差し込んだ。これがまたルカにはなかなか難しく、碧の目に見られていることで難易度はさらに高まったが、どうにか二枚の葉はそれらしい位置に収まった。
さらに促されるままに、ルカは南天に手を伸ばす。たくさんの実と雪うさぎとを見比べて、ちょうどいい大きさのものを探す。
慎重に選び取って、さてつけようというところで、隣からぷつんという音が聞こえて、ルカはそちらに視線を動かした。

「一匹では寂しかろうと思った故」

視線を感じ取ったのか、柔らかな微笑みと共に、大きな掌に乗った、ルカの雪うさぎより一回り大きな雪うさぎが差し出された。滑らかに整えられたまるい姿に、緑の耳が鮮やかに浮かび上がる。
未完成の雪うさぎは、赤い瞳があしらわれるのを今か今かと待ち構えていた。

「ちょっと、失礼しますね」

動かずずにはいられなくなって、ルカは掌に取ったばかりの二つの実を、大きな掌の上の雪うさぎにあしらった。
寒さのせいか緊張のせいか、少しだけ手が震えたせいで少し不格好になってしまったけれど、ルカは満足して雪うさぎに微笑みかけた。

「かたじけない」
「いえ、」

かけられた声に顔を上げたルカは、優しく細められた碧眼に、開きかけた口を慌てて閉じて、ぐるりと南天の方に向き直った。
高鳴る鼓動と火照る頬とを、必死で抑えつけながら南天を選ぶルカは、あの碧眼が直前まで驚きに見開かれていたことは知らず、ただ自分を見つめる視線の存在を必死に意識から追い払った。

ぷつりと実を取り、しかるべき位置を見定めて、そっとあしらう。
完成した小さな雪うさぎに、ルカは思わず顔をほころばせた。

「できた」
「おお、完成でござるか」

呟くのと同時に、掌の横に、大きな掌が並べられた。
咄嗟にというよりは条件反射で、ルカは並んだ男の体から離れようとした。
けれど、その前に並んだ雪うさぎが目に入って、引き離すのもかわいそうに思えて、動きを止める。
碧眼が、意外そうな色味を帯びた。

「離れないのでござるか?」
「いえ……」

何と言ったものかと言葉を選んで、ルカは雪うさぎたちに視線を固定したまま、口を開いた。

「引き離したら、寂しいかと思ったのです」

隣でふっと笑う気配も、今度ばかりは癪に触ることもなかった。


◇ ◇ ◇


戸締りをしようと玄関の引き戸から顔を出したグミは、門燈の明かりに照らされた南天の木の下に目を留めた。寄り添いあうように並んだ二匹の雪うさぎは、何処となく幸せそうに見えて、グミはそっと頬を緩める。
もともと雪のあまり降らない地域、暖かくなれば、雪うさぎたちは春を待たずに溶けてしまうだろう。
けれど、記憶に残って溶けない温かさが、そこにはあるようだった。
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