"> 解明Polka 抹茶チョコレート 忍者ブログ
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某歌ロイドにはまった人がちまちま書いているようです。ブログ名で好きCPがわかる罠

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ありのままに今起こったことを話すと、誕生日らしくない誕生日話をちんたら書いていたらバレンタインなぽルカが完成しました。
というわけで、バレンタインネタのぽルカSSです。
前々からぼんやり考えていたネタに、「ござる言葉も使わないし別に和菓子とかお茶とか好きなわけでもない普通の現代っ子ながくぽ×がくぽはござる言葉で侍でヨイチにまたがって日本文化(?)と思いこんでいるルカ」というものがありまして。今回のはその設定の上で書いてみたものになります。
気持ちはがくぽ→←ルカの両片思いで。

多分ぽルカなら何でも許せる心の広い方向けです。よろしければ続きからどうぞ。




ふと、店頭のそれに目がとまった。
かわいいながらも上品なそのデザインに、脳裏に思い起こされた女性の微笑みに、何となく気持ちが動いてそれを手に取った。
それをレジにまで持っていく勇気が出たのはおそらく、今日が今日だったからなのだろう。


St. Valentine's Day


「神威殿!」

嬉々とした色で染まった、世間にはクールと知られるその声に名を呼ばれ、がくぽは振り返る。
視線の先では桜色の髪を揺らし、空色の瞳を楽しそうに細めた女性が、意味深に両手を後ろに回した状態でじっとがくぽを見つめていた。
今日の日付は2月の14日、おそらくはそういうことなのだろうと思えばがくぽの胸は弾むものだが、どうにも誤解をしているこの人には、まず訂正しなければいけないことがある。

「ルカさん、『殿』ではなく『さん』か呼び捨てかで構わないと、何度も言ってるだろう?」
「そんなこと言って、恥ずかしがらなくていいんですよ神威殿。ござる言葉だって立派な個性だと思いますもの」

そうのたまって、楽しそうに、そしてどこか期待するように微笑むルカに、がくぽは内心でこっそり何度目かのため息をつく。
こうして訂正する回数ももう両手で足りないほどになったが、このルカは一体何があったのか、かたくなに『神威がくぽは侍でござる言葉で茄子の牛を乗りまわす』と信じ込んでいるようで、いたって普通の現代っ子であるがくぽもそうだと思いこんでいるらしい。

「まあ、それはいいんです、神威殿。今日は何の日だか知っていますか?」

きらりと光る空色の瞳が、知らない、或いは的外れな答えを期待していることを如実に物語っている。その輝きががくぽにはまぶしい。

「さ、さあ……今日は、14日、だっけ?」

その期待に応えるべく彼女の中のがくぽ像の模範解答を嘯くだけの優しさも、冷静に答えて期待を折る冷酷さも、残念ながらがくぽは持ち合わせていなかった。
問いに問いで返したあいまいなその言葉を、一体どう受け取ったのか。
何故か満足そうにうなずいたルカは、とっておきの秘密を話すかのように、もったいぶって次の言葉を紡いだ。

「今日はですね、実は、バレンタインデーと言いまして。外国では花を贈ったり色々するのですが、この日本では、チョコレート業界の陰謀に乗って、女性の友人同士でチョコレートをやり取りしたり、自分へのご褒美にちょっと高いチョコを買ってみたり。はたまた義理だけで職場の男性方に女性がチョコレートをばらまいたりする日なのです」

もったいぶった割に余計なことを並べ立て、最もポピュラーかつがくぽにとって重要な、そしてルカにとっても重要であってほしい事柄をこぼしたまま、ルカは得意げに言いきった。がくぽは「はぁ」という気の抜けたあいまいな相槌しか返せなかった。むしろ他にどうしろと言うのか。
もっと大げさな驚きを予想していたのだろう、ルカはちょっと拍子抜けしたような様子でまじまじとがくぽを見つめたが、すぐに気を取り直して、こほん、仕切り直すように可愛らしい咳払いをした。

「まあそれでですね、神威殿にも」
「殿はいらないぞ」
「いいじゃないですか!話の腰を折らないでください。せっかく、ふ、普段お世話になっている神威殿にも渡そうと、用意してきたんですから……」

拗ねるように目を背けたルカに、がくぽはしまった、と思わずいつもの癖で訂正した自分を呪った。が、ルカはそのまま頬を少し紅に染めて、ずっと後ろ手に持っていたそれをがくぽに差し出した。
淡いピンクの柔らかな袋の口を、空色のリボンで可愛らしく結んだ、いかにもな小さな包み。ぱっと目に映せば、渡してきた当人を思い起こすであろうその配色に、がくぽは思わず背けられたその表情を探るように覗き込んだ。

「も、貰っていいのか?」
「そうじゃなかったらこうして差し出したりしません!」

羞恥心を振り切るように語気を強めて言ったルカは、しかしすぐに打ち消すようにかぶりを振って、消え入りそうな細い声で呟いた。

「……いえ、貰ってほしいんです。日頃の、その、色々な感謝とか思いを詰めて作ったんです。受け取ってください」

手作りらしいということに、がくぽはそっと瞠目した。それではまるで本命みたいではないか、と。そして数秒の間をおいてから、そっと肯くと、壊れものを扱うかのような手つきでその小さな包みを受け取った。
はじかれたようにがくぽを見上げたその表情は、照れと喜びと少しの切なさが入り混じったものに見えて、その複雑な色にがくぽは思わず見とれてしまう。

「ありがとう」

一音一音に愛おしさをこめるように丁寧にがくぽがそう発音すれば、ルカは頬を紅に染めたまま嬉しそうにひとつ肯いた。その表情にめまいを覚えるほどに、ルカのことを好いている自分を自覚して、がくぽは内心だけでそっと苦笑した。そんな自分を、けれど今はそっと心の底に仕舞いこむ。

「こちらこそ、受け取ってくださって…いつも、ありがとうございます、神威殿」

感謝の言葉を前面に押し出すルカは、つまりがくぽが『バレンタインデーの重要な意味』を知らないことを前提に、手作りの、彼女の色をしたラッピングを施したチョコレートを渡してきたのだ。どんなにその意味を深読みしようとも、目の前の表情がどれだけ恋する娘のように見えても、本心は未だ隠されたままということになる。
それを踏み超えるだけの覚悟ができないがくぽは、だから、その設定に乗っかることにした。

「それにしても、今日がそういう日なのであれば、ちょうどよかったと言うべきなのかな」

そう嘯いてがくぽは懐を探り、ついさっき購入しそつなくラッピングまでしてもらった小さな小箱を取り出した。そして、不思議そうにがくぽの手元を見つめるルカに、そっと差し出す。

「これを。見つけた時に、ルカさんを思い出したんだ。だからまあ、日頃の感謝やらをこめて」

しげしげと見つめながら受け取ってくれたルカに目で開けるように促して、はやる鼓動を抑えながら、がくぽはじっとルカの反応をうかがった。
そして、中身を見とめたルカの瞳が、そっと見開かれる。

「すごい、綺麗……!でも、本当に私がいただいていいんですか?」

小箱の中に収まっていたのは、クリスタルカットを施された透明なローズピンクのケースに、優雅に鎮座する深紅の小さなバラの花。
気高くも上品で、そしてどこか可愛らしいその様子に、がくぽはルカの姿を重ねたのだ。

「ああ、君に受け取ってほしいんだ」

そう言って、がくぽは笑いかけて見せる。戸惑っていたルカの瞳が、それで安心したように嬉しそうに揺れて、がくぽは内心でガッツポーズを決めた。



◇ ◇ ◇


嬉しそうに手を振って帰って行ったルカの背が見えなくなるまで見送って、がくぽはそっと溜息をついた。
きっとルカは、がくぽが赤いバラの花言葉など知らないものだと思ったのだろう。或いは、ルカ自身が花言葉を知らないのかも知れない。
そしてがくぽも、バレンタインのチョコレートにいわゆる本命というものがあるのを、知らないことになっている。
未だ口にできないその言葉を、今はまだ贈り物に託して。
いつの日かきちんと口にできるようにと、情けなくも思える自分に苦笑して、がくぽも家路についた。


ちなみに、チョコレートは抹茶チョコレートだった。
失礼ながらルカに不器用なイメージをもっていたがくぽは、綺麗に美味しく仕上げられたその出来栄えに感嘆の声をあげたが、抹茶チョコレートという選択肢を選んだ彼女の『がくぽ』に対するイメージを根底に見て、複雑な気分を同時に味わうこととなった。
誤解が解けるのはいつの日か。



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