"> 解明Polka ひたすら穏やかに甘い感じに 忍者ブログ
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某歌ロイドにはまった人がちまちま書いているようです。ブログ名で好きCPがわかる罠

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H23年5月5日でにーさんめいこ=カイメイの日!ということらしいので、スタンダードなカイメイなお話を。

恋人な2人の、穏やで甘い朝のひと時を…ということで書いてみましたが、甘くなったかな?という感じのお話です。当サイトは照れ屋で恥ずかしがりで乙女なメイコさんを推奨しています。多分。
甘ったるい話と言うのを書くのはなかなか難しいものです。

では、よろしければ続きからお進みくださいませ。



カーテンの隙間から、薄明かりの射し込む朝早く。
思いがけずすっきりと目を覚ましたメイコは、まだ少し肌寒い朝の空気に、ふるりと身を震わせた。

時計を確認してみれば、案の定起きる時間にはまだまだ早い。普段なら迷わずもう一度寝てしまうところだが、せっかく気持ちよく起きたものを、また寝てしまうのももったいない。
束の間の思考時間を経て、メイコは薄手の上着を手にとって、するりと部屋から抜け出した。

なるべく音をたてないようにと、慎重に扉を閉め、押さえていた取っ手からそっと手を放す。カチャリと小さな音を立ててしまった部屋の扉に、ふうと息をついてリビングの扉に目を移し、あら、と首をかしげた。昨晩、最後にリビングを出た時には確かに閉じたはずのそこは、何故か僅かに開いたままになっていて、薄暗いリビングの様子が垣間見られたのだ。

(誰か、起きたのかしら…?)


不思議に思いつつ、そのまま扉を押し開き、覗くように室内をうかがって、メイコはその犯人の姿を見つけた。
軽い足取りで部屋を横切って、急くように手を伸ばしてベランダへの窓を開く。その身を外へ乗り出すようにして、メイコはよく見知ったその背に声をかける。

「カイト」
「──メイコ?」

驚いたように眉をあげて振り返った顔に笑顔を返して、メイコはカイトの隣に並んで、仕草を真似るように手すりに体重を預けた。

「おはよう、早いのね」
「うん、おはよう。メイコこそ早いね。大丈夫、寒くない?」

羽織った上着を見てか、そう気遣うカイトに、大丈夫、と返して、メイコは先ほどまでのカイトと同じように、遠くの空へと視線を移した。隣で同じように見上げる気配を感じながら見つめる空は、まだ朝日の姿は建物の向こうで見えないものの、まばゆい光に照らされて、すっかり明るくなっている。
眩しい空に目を細め、メイコは清々しい空気を胸一杯に吸い込んでは、深く長く息をつく。

「まさに清々しい朝、ってやつだね」

隣で笑う気配にメイコがカイトを振り返れば、ちょうど同じタイミングでカイトも振り返ったようで、ぱちりと目があった。濃い青を湛えた瞳に射した光が深みを生んで、吸い込まれてゆくようで、目を離せなくなってしまう。そのままじっと瞳を覗きこんでいると、不意にその瞳が柔らかく細められて、同時ににゅっと伸びてきた手が、くしゃりとメイコの髪をかき混ぜた。

「ちょ、ちょっとカイト?何するのよ」
「んー?いいじゃん、どうせ寝ぐせついてるんだし?」
「よくないわよっ」

悪戯っぽく笑う瞳にしかめっ面を返して、しつこい手をぺチリとはたく。そっぽを向くように空を見上げれば、ごめんごめんと、あからさまに苦笑する気配があった。けれどメイコは構わずに、顔もそむけたままで、かき混ぜられた髪をそっと手ぐしで整える。思っていたよりもぐしゃぐしゃにはなっていなかったようで、少し気の抜けた調子で、ゆっくりと手を動かした。

少しして、窺うように近づいてきた大きな手に、警戒して僅かに身を固くすると、梳くだけだよ、と穏やかな声が降ってくる。やがて髪に触れたその指が、今度は言葉通り髪を梳きはじめると、メイコは大人しくそれに身を委ねた。

些細な動きから気持ちを読まれているようで、それは気恥ずかしくはあったけれど、カイト相手なら不快ではなかった。安心して甘えられるということは贅沢だなと、ぼんやりと考えながら、髪を梳く指の感覚を追う。

「どうかしたの?」
「へっ?」

唐突に声をかけられて、メイコは魔の抜けた声と共に振り向いた。振り向いてから自分がそっぽを向いていたことを思い出し、しまったと思う。もう特に意地を張っているわけでも何でもなかったけれど、してやられたようで、少しだけ悔しくなったのだ。けれどそのかすかな悔しさも、覗き込むようにメイコを見る瞳にとらわれて、あっさりと溶けてなくなってしまった。

そんなメイコの微妙な気持ちの変化を知ってか知らずか、カイトはただ問いを重ねた。

「いや、さっき僕のことじーっと見つめてたでしょ?何かあったのかと思ってさ」
「なっ……」

本気なのか冗談なのか、判別しかねる真顔で、さらっと自信ありげな顔でのたまったカイトに、メイコは一瞬問いの内容を理解し損ねて、まじまじとカイトの顔を見上げた。
そして一瞬置いて理解して、かあっと頬を上気させた。

「ばか、み、見つめてなんかないわよ、別にっ」
「あれ、そう?」

おどけるような調子のカイトに、そうよ、ときっぱり返して、メイコは足元に視線を落とした。その瞳も、髪も顔も、視界から外して、それから独り言のように付け足した。

「……ただ、綺麗だな、と思っただけよ」
「そっか」

ふっと息をつく、その息使いの音が、やたらと耳について残って、メイコは顔をあげられないまま、未だ髪を梳いて滑る指の感触を追う。

「あのねえ、メイコ」

少しの間の後に発せられた、もったいぶったようなカイトの声にも、メイコは返事をしなかった。ただ、気にするほどに全身の感覚はカイトを注視して、聞きもらすまいとしているようになってしまう。
目につく反応がないことにはさして気を止めなかったのか、カイトは淀みなく、まるでとっておきの秘密を話すような高揚感をはらんだ口ぶりで、言葉をつづけた。

「メイコの方がね、ずっと綺麗だよ。瞳も、髪も、何もかも全部」

言葉に合わせて、髪をすいていた指がそのままひと房救いあげて、光に透かすようにさらさらとこぼした。

「特にね、こうして明るいところに居ると、きらきら光ってすごく綺麗。光に愛されてるみたいだね」

恥ずかしげもなくそう言いきった後、一番愛してるのは僕だけどね、と付け足すことも、カイトは忘れなかった。そして自然な手つきで空になった手をすっと顎に添えて上げたものだから、メイコはつられて、すっかり真っ赤に染まった顔を、カイトの眼前に晒した。

悪戯っぽい笑顔を浮かべているものの、瞳に射す光はとても真摯な色をしていて、恥ずかしさや、照れや愛おしさが入り混じった心からすっと浮かび上がった言葉は、やはり「綺麗」の一言だった。
恥ずかしくとも、ずっとずっと見つめあうと言うのなら、それはそれでいいなと思った。

やがてお互いの瞳に惹かれあうように、至極当然の流れで顔と顔が近付く。
濃い青の瞳は、最後の最後のぎりぎりまで閉じられず、ひたすらまっすぐに見つめてきていた。それを知っている紅茶色の瞳も、やはりぎりぎりまで閉じられなかったのだ。

たっぷりと時間をかけて甘い空気を味わって、やがてどちらともなく唇を離した。
見上げなおしたカイトの顔は、やはり綺麗で、けれど僅かに赤みの差した頬はどこか可愛げがあって、そういうところも愛おしいと思えば、胸の奥底からじんわりと温かいものが沁みてくる。

陽はもう大分高く上ったようで、建物の向こうから直接光が射してくる。
その光よりもずっと眩しい笑顔に、メイコも晴れやかに笑顔を返した。





今日もきっと素敵な一日





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