"> 解明Polka 7月 忍者ブログ
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某歌ロイドにはまった人がちまちま書いているようです。ブログ名で好きCPがわかる罠

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お久しぶりです。管理人です。
習作な感じですが、ぽるかでひとつ、なんとか書き上がりましたので、こっそり置きに参りました。

いつもと少し趣向を変えて、(がくぽ-えせ侍言葉)×(ルカ-ツンデレ)な雰囲気でお送りいたします。
結果、ただのお前らもう結婚しちゃえよなアベック以上カップル未満になったような…?
別段イチャイチャしてるわけでもないです。
ありがちっぽい眼鏡ネタです。
さらっと読めるもの、だと、思いま…す(自信がないならそう言え)。

よろしければ、続きからどうぞ。

…それにしても、何で一カ月で広告出たんだろう?



視界をぼんやりと縁取る、赤のフレーム。
白い紙面に躍るたくさんの黒い音符たちを、空色の瞳がレンズ越しに追いかける。


レンズ越しの距離


ふと、手元の楽譜に影が落ちてきて、ルカはそれでようやく、自らの背後に立つその存在に気がついた。
同時に視界の端に紫の髪が揺れるのを認めて、慌てて振り返ってみれば、ソファの背を挟んだそこには案の定がくぽの姿。
ルカが振り返ったことにより柔らかに細められたがくぽの目は、しかしルカが耳元に響く音楽を止める間に、驚いたように軽く見開かれた。

「──がくぽさん? 私の顔、何かついてる?」

ルカが訝しげに首を傾げると、がくぽは複雑そうな表情で顎に手を当て、ふむ、と一息ついてから口を開いた。

「まあ、ついていると言えば、ついている、な」
「どっちなのよ」

あいまいな表情と、刻まれた眉間のしわに、ルカの口からは思わず笑い含みの突っ込みがこぼれた。

「そこは笑うところか? ……そら、それ」

参ったな、というように少し肩を落としたがくぽの手が、そのままするりとルカの顔の横へと伸ばされる。
それでルカは、ようやくがくぽに目を見開かせたその存在に思い当たった。

「ああ、これね」

ひょいと片手をあげて、軽くフレームに触れて見せれば、がくぽは大きくひとつ肯いた。

「ルカさんは目が悪かったのか」
「いいえ、伊達よ?」

意外そうな表情でそう訊かれて、ルカは軽く笑いながらそのまま眼鏡を外した。
視界は特に変わることはない。強いて言えば、赤の縁取りがなくなるだけ。

「おしゃれと、それから、かけている方が集中できるような気がして」

言葉に合わせて、ルカはひらりと手元の楽譜を揺らす。
がくぽは納得したように数度軽く肯くと、ひょいと身をかがめ、ソファの背にもたれるようにしてルカの肩越しに楽譜を覗き込んだ。
ルカの肩の上に紫の髪が落ちて流れる。
軽くこすれあい、しゃらりと音を立てたのが耳に届いたような気がした。
それが妙に気恥しく思えて、ルカも慌ててがくぽに倣うように楽譜に視線を落とす。

「新曲か」
「ええ」

平静を装って言いつつ、ルカはわずかに体を傾けて、がくぽから、正確にはその顔から、少しでも距離を取ろうと試みる。
がくぽの目は真剣に楽譜に向けられていて、気づく気配はない。
横目でちらりとうかがうがくぽの横顔が、わずかに確かに遠ざかって、心の内だけでそっと安堵の息をつく。

とはいえ、体を傾けて稼げる距離などたかが知れている。──まだ近過ぎる、と頭の片隅で声が上がった。なのに一方で、嫌だ離れたくない、という声が上がった。
矛盾する声と、得体の知れない焦燥感のようなものに追われるように、ルカは視線をがくぽから引き剥がして、無理やり楽譜に固定した。
それでもすぐ横にいる存在が気になって仕方がなくて、紙面にいくら視線を走らせても、音符なんて一向に頭に入ってこない。集中、集中、気にしない、気にしない、と、そう必死に自分に言い聞かせても意味などあるはずがない。
結局耐え切れなくなって、そのくせ面と向かって振り返る勇気もなくて、ルカは再び横目でがくぽをうかがった。

目が合った。

「──っ!?」

驚いて、体が思わず後ずさろうとするのをどうにか堪えたものの、顔がぶんっと音をたてんばかりの勢いで背くのだけはどうしようもなかった。
不自然にそっぽを向いたその姿勢のまま、ルカは突然跳ね上がってから早鐘を打ち続ける鼓動を、どうにか抑えようとしていた。

気まずい、としか言いようのない沈黙がおりて、しばらく。
お互いに、同じような反応をして、同じような思いで沈黙を味わっていた。
そのことに気づくのは、どうにか取り繕おうと思うだけの余裕が生まれて、ちらりと相手をうかがってからだった。
半ば背けたままの顔と顔の間を、探り合う視線が交錯して、何だか可笑しくて、どちらともなく笑いがこぼれおちた。

「ふふ、なによ、がくぽさん。その顔っ」

笑いを噛み殺そうとしてできないまま、肩を震わせるルカがそう口を開けば、ルカさんこそ、と、やはり笑いを堪えようとしている声でがくぽが返す。
少し前までの気まずさなど、どこか遠くへ飛んで行ってしまったようだ。

「はあ、笑った、笑った」
「いや、全く」

ひとしきり笑いあってから、ルカは目じりに浮かんだ涙を拭い、がくぽは落ち着きへの最後の一歩というふうにひとつ息をついた。
それからルカは仕切り直すようにこほんと一つ咳払いをすると、手に持ったままだった眼鏡をかけ直す。

「さて、申し訳ないけれど、私はこの楽譜、読んじゃわないとだから」

振り返ってすっと顔を上げると、割合近いところにがくぽの顔が合った。
ルカの姿を映した碧眼は、それに応えるように、ふっと優しく揺れた。

「ああ、邪魔をしたな」
「いいえ」

楽しかったわ、という言葉を込めるように、ルカも表情をゆるめた。
願わくは、目前のそれのように優しいものになっていればいい、と思いながら。
柔らかく細められた瞳に、おおよそそれは叶ったのだろうと、勝手に肯いて勝手に満足する。
そこでルカは、ふと思い出して言葉をつないだ。

「そういえば、何か、用だった?」
「え」

ルカの問いかけに、がくぽは一瞬ぎくりとしたような声を出して、それからぶんぶんと手を振りながら、苦笑気味の顔で言う。

「何でもない。ルカさんがいたから、気になっただけで」

何をしているのか、様子を見るだけのつもりだったのだと言うがくぽに、ルカは首を傾げる。

「そう? 用があるなら遠慮なく、」
「ないない。本当にそれだけ」

ルカの言葉を遮るように、がくぽは口を挟む。
何となく腑に落ちないルカだったが、気にすることはない、と繰り返されれば、それ以上追及する気は起らなかった。

「それでは、これ以上邪魔をするのも悪いから」
「え、ああ、ごめんね」

そそくさとがくぽがソファの背から長身を起こすのを追うように、ルカは視線を巡らせた。

「気にすることはない。応援している」
「ありがとう」

では、とひらりと振られた手に、ルカも軽く振り返して、足早に去ってゆく背を少し見送る。
歩調に合わせて揺れる紫の髪に少しだけ気をとられつつも、楽譜へと意識をを移しながら、そういえば、とルカは思い返す。
さっきまで彼の顔はとても近くにあったのに、その前のような、ものすごい気恥ずかしさは感じられなかった。

何故だろうと考えて、思い当たる違いは、度の入らないレンズ一枚。
かけてもかけていなくても、大差のないもの。
そっとフレームに触れてみても、眼鏡がルカに答えを返してくれるはずもなかった。
けれど、何となくわかったことが一つ。

レンズ越しの距離が、意外に合っているのかもしれない、ということ。







◇ ◇ ◇

──今はまだ、ね。

がくぽが本当に用事があったのかなかったのか、あったなら何だったのかは、皆様のご想像にお任せします。
(2010/07/09)

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