"> 解明Polka ハッピーハロウィン! 忍者ブログ
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某歌ロイドにはまった人がちまちま書いているようです。ブログ名で好きCPがわかる罠

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前日までに完成させる、ということができない管理人です、こんばんは。

というわけでハロウィンです。相も変わらずカイメイでぽるかです。
我が家の面々が無駄に技術もちなのはもう仕方ないです。カイトは暇な時期に家事全般を覚えプロ級にまで腕を磨き、それに裁縫が含まれるなら最強だろとか、そういう訳のわからない妄想のもとの設定です←
便利な家事手伝いボーカロイド、一家に一匹どうですか! みたいな感じで。全力で本職を見失いそうですね。

それはさておき、やりたいことをアレだこれだと突っ込んだら、gdgdの訳わからん感じで5割こじつけみたいな、そんな感じのお話になりましたが、以下ハロウィンなSSとなります。
今回は女性陣が頑張った感じです、色々な意味で。
でも影の作者栄誉賞はレンです。彼には毎度毎度苦労をかけてる気がしますが、まあ今回もそんな感じです。ごめんね、これからもよろしく!(イイ笑顔)

さてそんな感じですが、それでもいいよ! という心の広い方は、続きからどうぞ。

■追記■※といっても全く大したことではないよ!
パンプキンパイとシナモンティのくだりでニヤッときた方は同士!誰が何と言おうと同士です!
ローズパイもいいですよね!
■以上■



ガタガタガタガタ……
日付の変わり目も近い夜中、明かりがもれるリビングから聞こえてくるミシンの音に、ルカは首を傾げた。

お菓子をくれなきゃ

そろりと扉を開いてみれば、そこにいたのはミク、リン、レンの3人。決して狭くはないリビングには、今は大量の布があふれかえっていた。そのほとんどが黒い布で、その中でちょこちょこと動く鮮やかな緑と金色の髪が妙に浮いていた。その中で真っ先にルカに気付いたのはレンで、食卓の上いっぱいに広げた布を繰っていた手を止め、同時にミシンを止めると口を開いた。

「ルカ姉、どした? こんな時間に。めー姉達ならもう寝てるけど」
「いえ、そのこんな時間にミシンの音が聞こえたものだから」

その会話に反応して、床に広げた布の中で作業していたミクとリンも顔をあげた。ミクの手には裁ちばさみが、リンの手には薄っぺらな紙と鉛筆が、それぞれ握られている。これとレンのミシンと布の量を考えれば、出てくる答えはおのずと限られてくる。

「服を、作っていたの?」
「そうだよ! あ、ルカちゃんは明日が何の日か知ってる?」

答えるミクはその手を止めて悪戯っぽい瞳をキラキラとさせてルカに訊ねてきた。その傍で、リンもやはり手を止めて同じような瞳をしている。レンだけは布と針を取り上げ、何やら刺繍らしいことを始めた。会話の最中にミシンを再開するわけにもいかないと判断したのだろう、それにしても器用だ。
それらの光景を視界の端に捕らえながら、ルカは暫し考える。明日は10月の末の日。明後日は11月の始め、と、そこまで考えてからルカは答えに思い至った。

「Hallowe'enね?」
「さっすがルカちゃん、発音いい!」
「あたしたち今、その衣装の準備をしてるんだ」

そう言われてみれば、黒い布がほとんどを占めるのにもうなずける気がした。けれどまだ疑問は残る。

「自分たちで作ってるの?」
「そうだよ! あたしとミク姉でデザインして切って、レンが縫うの。やっぱり細部までこだわりたいからねぇ」
「そういえばルカちゃんも仮装する?」
「わたくしも?」

若干の戸惑いを見せるルカに、ミクとリンは実に生き生きとした顔でぐいと詰め寄る。ルカがはっきりとした答えを返す前に、ミクとリンは楽しそうに、そして勝手に話を進めて盛り上がっていく。いつの間にやら2人の手にはメジャーが握られていた。

「ルカちゃんはスタイルが良いから、作りがいがあるよねー」
「そうそう、この美しいボディラインを際立たせ、けれど誇張しすぎないようにあくまでさりげなく……腕が鳴るねえ」
「え、あのちょっと、2人とも?」

良くも悪くもこんなにも生き生きした表情を見せる2人を見るのは初めてで、ルカは押されているのを自覚しつつもどう対応したものかわからない。歌っている時にはもちろん2人も最高にいい表情を見せるのだが、今のこの表情にはまた何か違う物を、そして僅かな身の危険を感じる。

「時刻はまだ午前0時。ミク姉?」
「うん、いけるいける。でしょ、レン?」

にやりと笑う2人に、レンは振り返ると仕方ないというように溜め息をついて、短く返した。

「わかったからさっさと作業しろや」

途端に上がる華やかな2人分の歓声。その陰で、おいてけぼりをくらったルカに、レンが諦めろ、というように目配せをしてきた。

「こうなったこいつらは止まらねぇから。この際ルカ姉も思いっきり楽しむしかないんじゃね」

それっきりでルカから視線を外すと、レンはまたもとのようにミシンのスイッチを入れて手元に集中してしまった。

結局製作作業はルカも巻き込んで、明け方まで続いたのだった。


◇ ◇ ◇


徹夜で作業した4人が目を覚ましたのは、日もすっかり昇った午前10時。昼ごろから入っている仕事に間に合わせるには非常にぎりぎりの時間だ。
寝巻のままのろのろと自室を出たルカの感覚をまず刺激したのは、リビングの方から漂ってくる、香ばしく甘い良い匂いだった。まるでその匂いに誘われるように扉を開けたルカを出迎えたのは、ルカと同じく寝巻のまま、食卓で遅い朝食をとっているミク、リン、レンと、部屋着の上にそれぞれ赤と青のエプロンをつけて忙しく動き回るメイコとカイトの姿だった。

「おはようルカ。聞いたわよ、貴女もハロウィンの仮装作り手伝ったんだって?」

手元では忙しく泡立て器を操りながら、苦笑気味にメイコがルカに声をかける。ルカが頷きながら席に着くと、いつの間に用意したのか、ミク達の皿にのっているのと同じサンドイッチが乗った皿と温かいミルクティーのマグカップをカイトがその前に運んだ。何となく癪に思いながらも、如何にも美味しそうなその朝食にルカが礼を言うと、カイトは思わずイラッと来るくらい良い笑みをかえした。

「ということは、ルカはお菓子をもらいに回る側だね。とりあえずこのパソコンの中の人たちは、去年の件でハロウィンの事は了解済みだから、思いっきり回ってくるといいよ」
「うんうん、今年はがくぽもお菓子用意するって言ってたし、去年以上にたくさん集まるんじゃないかしら」

メイコの一言に、ミクとリンがぴくっと反応した。

「えっ、じゃあがくぽさん洋菓子作るのかな?」
「うーん、やっぱ和菓子じゃん? それにどうせ洋菓子ばっかり集まるんだから、和菓子が混じった方が楽しそう」
「どちらにせよ、がくぽさんの作るお菓子は美味しいから楽しみであると」
「うんうんそういうことですね、ね、ルカちゃん?」
「は!?」

唐突に振られたくない話を振られ、ルカは危うく取り落としそうになったサンドイッチをしっかり掴み直した。そしてルカが顔を真っ赤にして反論しようとする頃には、ミクとリンは自分たちの間で会話を再開していた。

「とりあえずパソコンの中回って、それからがくぽさん達の家かな?」
「そだね、それからぐーちゃんを誘ってこようよ!」
「で、みんなで家に帰って来て」
「そして最後には、めー姉とカイ兄お手製のお菓子が待っているってね!」
「今年も楽しみにしてるからね、お姉ちゃん、お兄ちゃん!」
「まっかしとき!」

ミクとリンがぴったり揃った動きでメイコに向かってぐ、と親指を立てて見せれば、メイコはすかさずぐっと親指を立て返した。妙にテンションの高い3人にルカはあっけにとられるが、レンは何事もなかったかのように最後の一口を口に放り込むとマグカップを空にし、カイトはカイトでピピピ、と音を立てたオーブンの相手をしている。何か言った方がいいのか、とルカはとりあえず口を開きかけるが、何と言えばいいものかわからない。
と、そこでカイトがぽつりと口を開いた。

「そういえば、そろそろ準備しないと仕事間に合わないんじゃない?」

その言葉と同時にレンが食器を持って立ち上がると、ミクとリンは慌てて時計を見上げ、ルカもつられて時計を見た。時計は、本来ならとうに食事を終えていなければならない時間を指している。3人は慌てて食べることに集中した。
行ってきます、と焦りの混ざった4人の声が玄関に響いたのは、それから間もなくのことだった。


◇ ◇ ◇


そして夕方、玄関に並ぶのは、昼とは打って変って浮足立つような、期待に溢れた表情で立つ4人。それぞれが昨晩徹夜で作ったこだわりの仮装をしていて、見送るメイコとカイトは感心したようにそれを見ていた。

ミクの衣装は魔女で、黒いゴシックなひざ丈のワンピースドレスだ。袖はパフスリーブで、随所に黒いリボンと白いレースがふんだんにあしらわれていて、少し動くたびにひらひらの裾がふわりと揺れる。帽子はお決まりの三角帽子で、ワンポイントにハロウィンらしいウィルオーウィスプの飾りがついている。お菓子を入れるかごを持つのと反対の手には、これまたお手製のロリポップの杖が握られていた。

リンは黒ネコで、金髪によく映える黒い猫耳のバンドがとても際立っている。黒いノースリーブのハイネックの首元には金色の鈴が付いていて、裾は両脇を絞ってリボン結びにしている。下はギャザーを寄せたふわふわの、やはり黒いミニスカートで、ご丁寧に黒い尻尾付き。黒いニーハイに、黒い手袋は肘上まで来る長いもの。なりきっているのか、喋るときにはいちいち語尾に「にゃ」とつける徹底ぶりだ。

対するレンは狼男で、落ち着かないのか茶色の耳とふさふさの尻尾を気にするようにいじっている。服は割と普段着に近く、襟のたった白いシャツに黒いベスト、暗い赤を基調にしたチェックの半ズボン。襟元の赤いリボンは、当初はネクタイだったのが、ミク、リン、ルカの強い反対にあって変更するはめになったものだ。

そしてルカは吸血鬼。散々迷ったミクとリンが、結局タイトでシックなこだわりの黒いドレスをデザインし、その上に表は黒、裏地は赤の如何にもなマントを着せたのだ。ドレスはひざ丈のシンプルなもののようで、その実あちらこちらにあしらわれた細かな刺繍や、ルカのスタイルを美しく見せるこだわりのラインを追求した仕様が、ミク達曰く非常にロマンの追求されたものらしい。ドレスに合わせるように、これまた細かく飾り立てられたヘッドドレスもつけている。

それをしみじみと観察するメイコとカイトに、ミクとリン、ついでにレンまでも、浮き立ちつつもどこか緊張した面持ちだ。やがてふっとメイコが微笑むと、まずミクとリンがほっとしたように息をついた。

「2人とも、なかなか良いデザインじゃない。細かいところまで良くこだわってるし、うん、素敵よ」
「レンもよくこれだけ頑張って縫って刺繍して、大変だったんでしょう? よくミク達の注文に応えられたね」

メイコの評価に歓声をあげて抱き合うミクとリンに続いて、カイトの言葉にレンも照れつつも得意げに答えた。

「あったり前だよ、カイ兄にはまだまだ敵わないけれど」

その言葉にルカが首をかしげると、カイトが答えた。

「レンに一通りの縫製を教えたのは僕だから。ついでにミクとリンにデザインと型紙の作り方を教えたのはめーちゃん。ミクもリンも針使わせると危なっかしくてね」

「ちょっとお兄ちゃん、それは言わないでよっ」

カイトの言葉に、ミクが頬を膨らませた。けれどあまり気にとめてはいないらしいリンは、キラキラした瞳でルカを見上げた。

「ルカちゃんもこの際だからカイ兄に縫製習ったら? カイ兄本当に上手だからそこは保障するし、縫製役が増えればあたしたちもそれだけ腕が鳴るし、花嫁修業にはもってこいだよ!」

ルカには瞬時に言いたいことがたくさんできた。なんでこんな青いのに教わらなければならないのだとか、そもそもなぜそこまで自分たちで作ることにこだわるのだとか。けれどそれは最後の一言によって全て上書きされてしまった。

「は、ははは花嫁修業!?」

動揺するルカの顔をのぞきこんで、ミクは心底楽しそうに笑った。

「わーお、ルカちゃん真っ赤だね」
「そうだよ、お裁縫できるお嫁さんはいいよー?」
「そう思うならまずお前らが裁縫覚えたらどうだよ……」
「あれ、レン何か言った?」
「いや、なにも」

怒涛のように喋る3人についで、メイコとカイトもどこか乗り気なようだ。

「そうね、歌の息抜きにもいいんじゃないかしら?」
「まあ、僕としてはどっちでもいいけれど。ルカがやりたいなら」
「と、とと、とにかく行きますわよ! あんまりのんびりしていると遅くなります!」

色々と耐えられなくなったルカは、さっさと玄関を開けると飛び出す勢いで歩き始めた。その後を、まだこみあげてくる笑いをこらえながらミク達が続く。

「じゃあ、行ってきます!」
「いってらっしゃい、あまり迷惑かけちゃだめよ?」
「わかってますって!」

元気よく飛び出して行った4人を見送って、メイコとカイトは台所に戻る。まだ本日のメイン、パンプキンパイが仕上がっていないのだ。それに、時間があるならシナモンティも用意するつもりなのだ。
2人並んで台所に立ちながら、不意にカイトが口を開いた。

「ねえ、めーちゃん?」
「なぁに?」

メイコが振り向くと、カイトが悪戯っぽい光を宿した瞳でにっこりと笑っている。これを世間一般では茶目っ気のある、というのかもしれなかったが、生憎メイコには何か良からぬことを考えているようにしか見えなかった。でなければわざわざ家に2人しか居ない状況で聞いてきたりはしないだろう。これを世間一般では下心が見え見えの、というのだろうけれど、メイコも全くもってその通りだと思った。
その予想は案の定大当たりである。

「trick or treat?」

楽しそうに弾んだ声音に、メイコはただお菓子をあげるだけでは済まされないだろうことを察した。にこにこと笑うカイトに呆れたような表情を向ければ、「くれないの?」と実に楽しそうに訊ねられる。
メイコはカイトの悪戯などまっぴらごめんだった。去年悪戯を甘んじて受ける羽目になった時の事は思い出したくもない。と、そこで視界の隅に映ったできたてのキャラメルに、メイコの頭にカイトに上手く意趣返しする策がひらめいた。多少メイコも恥ずかしいけれど、そのくらいすればカイトもさすがに満足するだろうと考えて、その欠片を手に取る。

「それくれるの?」
「ええ」

不思議そうに首を傾げたカイトに、メイコは手早くキャラメルを口に放り込むと、そのままカイトの襟元をぐっと引いて、自らの唇とカイトのそれを重ねる。メイコからの意外な行為に見開かれた青い瞳に自分がぼやけて移るのが恥ずかしくて、メイコは瞳を閉じて、口の中のキャラメルを押し出した。
ほろ苦く甘い余韻を残してキャラメルが移動したのを確認すると、予想通りすかさず追ってきた舌と回される腕を振り払ってメイコは顔を離した。僅かに頬を染めたカイトと再び目が合う。その瞳の中に映るメイコ自身の姿は、瞳の色と同じだったけれど、実際には真っ赤な顔をしているだろうことをメイコは自覚した。

それでも、どうだびっくりしたか、と言わんばかりに睨んで見せると、カイトは口元を手で覆って視線を逸らし、ぽつりと呟いた。

「確かにびっくりしたし、まあ、これはこれでいいんだけどさぁ……」
「いいんだけど、何よ」

メイコが恐る恐る聞き返してみると、カイトはちらっとメイコを見た後、再び視線を逸らした。

「僕、どうせもらうんなら、お菓子よりめーちゃんの方がいいなぁ」
「ばっ……かじゃないの!?」

メイコの言葉に、カイトは心外だとでも言いたげな表情で振り返ったが、メイコが照れだけでなく本気で呆れている顔をしているのを見て溜め息をついた。

「……。凄く溜めたね」

本気なんだけど、と付け加えた声に、メイコの頬はまたかっと熱くなったけれど、もう知らない、とばかりにプイとそっぽを向いて再び手を動かし始める。

「当たり前でしょ!? もう、馬鹿なこと考えてる暇があったら手を動かしなさい手を!」
「はいはい」

それきりカイトも大人しく手を動かし始めた。ふざけてみたとはいえ、カイトも今はお菓子を作り上げてしまうことが最優先だということは重々承知しているのだ。けれど、いつもならもう少し粘ってくるところであっさり引かれてしまうのは、メイコにとってはそれなりに寂しいことでもあって。
だから、これは仕方ないのだと、メイコは自分に言い聞かせる。

「……後で、ね」
「え!?」

弾かれたように振り向いたカイトの顔が、馬鹿正直なほどに期待に輝いていたことに、メイコは呆れると同時に返って恥ずかしくなって、誤魔化すように必要以上に忙しく手を動かした。

「わかったらさっさと手を動かす!」
「はーい」

今度も大人しく手を動かし始めたカイトの顔は、鬱陶しいほどニヤニヤとしていて、それが何となく癪だったメイコは、作業を進める動きに交えて思いっきりその脇腹をどついた。


◇ ◇ ◇


パソコンの中を一通り回り、ほとんど一杯になったバスケットを抱えて、それぞれがそれぞれ、満足そうな笑みと共にルカ達は家の前に帰ってきた。
出る時には不機嫌だったルカも、行く先々で温かく声をかけられ、お菓子を渡されている内に、段々と気分が浮上してきて、今ではすっかりご機嫌だった。

「じゃあ、パソコンの中は一通り回ったし、がくぽさん達のところに行こっか」
「ぐーちゃん誘ってがっくんに突撃だね!」
「呼んだ!?」

突然割り込んできた声に4人が振り返ると、そこには真っ白な布の塊がいた。

「きゃあああああああああ!?」

思わず悲鳴を上げるミク、興味津々で瞳を輝かせるリン、ルカはとりあえずミクを宥め、レンが冷静に白い布の端を引っ張った。

「ああこら、レン君引っ張らないでっ」

白い布はあっさりはがされて、中からいつも通りのグミが顔を出した。白い布は、どうやらシーツらしい。

「ぐ、グミちゃんか、びっくりさせないでよぉ」
「ごめんごめん、でもそれだけ驚いてもらえたなら本望かなっ」

てへへ、と頭をかくしぐさを見せると、グミは再び布を被ってふらふらと動いて見せた。

「それより、今日はハロウィンなんでしょ? どうこれ、お化け!」

危なっかしい割には機敏な動きで、グミはくるっと一回転、かは外から見てわかりかねたが、とりあえず回って見せた。

「シンプルでわかりやすくて良いかなって思ったんだけれど、ミクちゃん達の衣装すごいね! 凝ってるとかそういうレベル越えてる気がする!」

布の端からひょっこり顔を出したグミは、改めてミク達の衣装を見て、心底感心したように言った。その言葉に、リンはぐっと胸を張って見せる。

「でしょでしょ、もっと褒めていいんだよっ」
「調子乗ってんな、ほら、さっさと行かねぇとめー姉達が待ちくたびれんだろ」

そのリンの首根っこを捕まえると、レンはずるずるとリンを引きずりながらがくぽたちの家の方に歩き始めた。

「こらレンっ、はーなーしーてー!」
「れ、レン待ってっ」

レンに続く形で賑やかにがくぽ達の家の前についてみれば、待ちくたびれたのか、がくぽは既に玄関前に立って待っていた。
やってくる賑やかな一団に気がついて、がくぽが顔をあげるのを見ると、ミク達はさっきまでの喧騒はどこへやら、さっと整列して見せた。少しためらうそぶりを見せたルカも、グミにしっかりと腕を掴まれて並んだ。
それからちらりちらりと目配せを交わすと、一斉に口を開く。

「トリック・オア・トリート!」

元気よく差し出された掌に、がくぽは微笑んで手作りの饅頭を乗せて行った。

「洋菓子に挑戦しようかとも思ったのだがな、やはりこれが一番かと思った故」
「ありがと、がっくん!」
「がくぽの饅頭は旨いもんな」

そうして順番に配っていったがくぽは、不意にルカの前で手を止めた。それからしげしげとルカを眺めるがくぽに、ルカは恥ずかしくなって、同時に何となく嫌な予感を感じて、警戒心むき出しの声で話しかけた。

「あの……。なんですか?」
「いや、ルカ殿に悪戯されるのも捨てがたいなと……」
「……」

当然のように沈黙が降りた。それきり顎に手をあてふむ、と考え込むがくぽに、ルカは心底あきれ果てた。そして、パソコンの住人達から貰った心のこもったお菓子達の入った籠をグミに託すと、おもむろに手を振り上げた。

ばちん!

歯切れのいい、そして聞くだけで耳に痛い音が響く。一拍遅れて、どさりとがくぽの崩れ落ちる音がした。
考え込んでいたためにすっかり反応が遅れたがくぽは、真っ赤にはれた頬に手をあて、慌ててルカを見上げる。対してルカは、腕を組んで仁王立ちすると、軽蔑の眼でがくぽを見下ろした。

「……申し訳ない」

恐る恐る、がくぽが口を開くと、ルカはふいと背を向けて、自宅の方へ歩いていく。

「え、えっとそうだね、お姉ちゃん達が待ってるし、とりあえず家に行こっか!」

その場を取り持つようにミクが口を開くと、それに調子を合せるようにリンががくぽとグミを誘う。
2人の返事はもちろん喜んで、であり、また少し雰囲気を取り戻して歩き始めた。それを見ながらがくぽを助け起こしたレンは、そっとがくぽに言う。

「ルカ姉、何だかんだハロウィン楽しんでたからさ、後でちゃんと謝っとけよ」
「う、うむ。かたじけない」

立ちあがったがくぽに、レンは少し大げさに溜め息をついて見せた。

「全く、年下にまで心配かけてんじゃねーよなぁ。気持ちはわからないでもないけどさ、空気を読まなきゃ、空気を」
「申し訳ない。いやしかし、やはり悪戯してもらうのも捨てがたいもので……」

反省はしているものの後悔はしていないらしいがくぽはそうブツブツ呟きながら歩き始める。その隣に並びながら、レンはそっとがくぽをどついた。

「わかった、わかったからそれ、もうルカ姉の前で言ってくれるなよ……」
「それは重々承知しているでござる」

本当かよ、という言葉は呑み込んで、レンは不安と共に歩を進めた。


◇ ◇ ◇


家に帰った面々を迎えたのは、いかにも美味しそうな匂いと、華やかな飾り付けのお菓子達だった。
その光景に歓声を上げたミク達は、バスケットの中身も合わせて、盛大にお菓子パーティーを始める。

あっという間に賑やかになるリビングの片隅で、がくぽはルカに渡し損ねた饅頭を弄んでいた。謝りたいのは山々、けれどルカは何故か常に誰かと喋っているし、一切がくぽの方を見ようとしないでいるしで、なかなか機会をつかめないのだ。

そうしてぼんやりとしていた視界に、不意に影が差し、同時に白い手が差し出された。
ハッと顔をあげたがくぽに、桜色の髪の持ち主は僅かに頬をくれないに染め、恥ずかしいのを堪えるかのようにきゅっと引き結んでいた口元を開き、小さな声で囁いた。

「trick or treat?」

それから耐えきれないというように目を逸らしてしまうも、しっかり差し出されたままの手に、がくぽは思わず微笑んだ。

相手から歩み寄ってもらわなければどうしようもできない自分を、正直情けないとも思う。けれどそれ以上に、彼女から近づいてくれたことが嬉しくて、がくぽはそっとその掌に饅頭を乗せた。
受け取るなり手は引っ込められたが、かわりに消え入りそうな声のお礼が零れてきた。それから小さく、さっきはごめんなさい、と続く。

そのままくるりと踵を返そうとするその手を、がくぽは慌てて引き留めた。

驚いて振り返ったその顔に、がくぽはできるだけ柔らかな笑顔を心掛けて微笑みかけた。

「こちらこそ先程は失礼した。受け取ってくれて、……感謝する」

その言葉に火をつけられたように、振り返った頬は真っ赤に染まった。熱くなった頬を隠す様にまた顔は背けられてしまったが、その足はもう逃げる素振りは見せなかった。

「お姉さま達が折角美味しいお菓子を用意して下さったのです。食べないと、もったいないですよ」

ついと手が差し出され、不自然な間を持たせるように呟かれた言葉に、がくぽは頷いて、そっと手を取った。


一部始終を横目でチラチラと見られていたことに、2人は遂に気付かなかった。
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