"> 解明Polka 滑り込みミク誕生日記念! 忍者ブログ
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某歌ロイドにはまった人がちまちま書いているようです。ブログ名で好きCPがわかる罠

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今日になるまですっかり忘れていた……!
取り敢えず日付が変わる前にうp。

詳しい話は後ほど。

突貫で短めですがよろしければ続きからどうぞ!




――すっかり遅くなっちゃった。

インターネットから自宅であるパソコンへと繋がっているカラフルな道をたどりながら、ミクはもうとっくに帰っていて夕食も済ませているであろう家族を思った。


君とこの歌を



今日はミクの誕生日だ。いや、誕生日だった。

本日の主役であった初音ミクは、どこのマスターのところのミクでもひっばりだこで大忙しだった。
初音ミクの名も有名になったもので、去年の誕生日も思いがけず大勢の人に祝われて、これにはミクだけでなくメイコやカイトも驚いたものだった。

今年はその去年に輪をかけた大騒ぎ。道を歩けば、ミクであるだけで流行りものに敏い商店街や広場の人たち、それに出張してきた音楽関連のソフトたちはミク自身を知らなくても祝いの言葉をくれたし、仕事先ではスタッフの皆が口々に祝い、プレゼントを渡してくれた。
祝いの歌をいっぱい貰って、感謝の歌をいっぱい歌って、ミクにとって幸せな時間だったのは確かだ。

けれど今日、ミクはまだ一番祝ってほしい、一番感謝を伝えたい人たちとまだ会えていなかった。

ミクの誕生日とあって、ミク自身も朝から仕事でスケジュールがいっぱいいっぱいで、メイコ達はメイコ達でお祝いのために駆り出され、朝から大わらわだったのだ。
そうしてあっという間に過ぎていった今日も、残り10分。がくぽの時のようなどんちゃん騒ぎのパーティーはもう出来っこないし、もしかしたらもう疲れて寝てしまっているかもしれない。
それでもミクは恨みはしないだろう。寂しいとは思えども、皆が疲れて寝てしまったとしても、それはミクの誕生日を精一杯祝ってくれたためなのだから。

だから、家の灯りが消えていても、悲しまないよ――

そうミクが決意したところで、景色が開けた。
エディタのフォルダとの接続が完了し、目の前に現れるのは現実世界と変わらない街並みの中に佇む住み慣れた家。
灯りは、ついていなかった。
覚悟はしていても、現実になってみればやはり辛いもので、ミクは知らず知らず唇を噛み締めていた。
皆疲れてる、仕方ないんだと自分に言い聞かせながら、それでもしょぼしょぼと消沈した気持ちを抑えきれないまま、足早に玄関に向かった。

かちゃり。取っ手に手をかける。

鍵は、開いていた。

泥棒などの心配はほぼいらない世界ではあるものの、些か不用心すぎる状態に、ミクは眉を潜めた。
翌朝にでもきちんと言っておこうと心に留め、ミクが戸をくぐったその時。

「……?」

真っ暗な玄関口で、ミクの耳は微かな音を拾った。

音、いや声。旋律を紡ぐ歌。言の葉をのせて響く歌声。
紡ぎ手は、ミクも良く知る対の少年と少女――

ミクの手から荷物が滑り落ちる。バタンと音を立て背後で戸が閉まる。
しかしそれらはミクの意識には留まらなかった。
時折まるで主旋律を欠くかのように揺らぎ、かと思えば流れるようにメロディーを受け渡す。
その歌声に呼ばれるように、ミクは2階への階段を駆け上がっていく。

階段の踊り場まで来たところで、ハスキーだが芯のある女性の声が加わった。
2人の声と綿密に絡み合いながら、主旋律を歌い、不意に身を引き、次なる旋律を待っている。

階段を上りきったところで、穏やかで高めの男性の声が加わった。
先に居た3人の声をふわりと支え、ある時は主旋律に躍り出て、やがて重なる歌声を呼び込むのが目に見えるようだった。
走って、ミクは目当ての部屋の前に辿り着く。

普段から練習に使う防音室。微かだが確かな音の波はそこからあふれ出していた。
それを見計らったかのように、力強く優しい女性の声が、低音から高音まで軽やかに駆け上がっていく。
旋律の穴が埋まったのを、耳よりも目で確かめたくて、ミクは迷わずその扉を開いた。

瞬間、広がるハーモニー。


Happy Happy Birthday Dearミク!


ミクの大切な家族が彼女のためだけに織りなすその素朴で壮大な響きに、ミクは目頭が熱くなるのを感じた。
そんなミクを温かく迎え入れるように、皆が皆それぞれの優しい笑顔を向けてくれていた。
やがてカデンツァを響かせた音の波は、引く潮が砂をさらっていくように心を捕らえて、何とも言葉で表わしがたい感動をミクに残して去って行った。
いつの間にかぽろぽろとあふれ出し頬を伝う雫もそのままに、ミクは心いっぱいの拍手を送った。
そのミクに、まずリンが突進するように抱きついて、よろけたところを後に続いてきたルカとレンに支えられた。

「ミク姉、泣く前にこれだけ言わせてっ」

キラキラと瞳を輝かせて、抱きついたままのリンはそう言って周囲の家族と目を合わせた。そしてすうっと息を吸い──

「せーのっ」

『誕生日おめでとう!』

リンの音頭に合わせて、5人の声が綺麗に重なった。直後に掛け時計の3つの針がカチッと音を立てて重なる。
ミクは思わず息をのんだ。ぎりぎり、終わってしまう前に間に合ったのだ。

「はーっ、ギリギリセーフだったね!」

「ってかリンっ、なんだよせーのって!」

「だって万が一にもずれたらイヤじゃん!」

「まあまあ、2人とも落ち着いて」

笑い祝いながらも小突き合う双子を、カイトが苦笑しながらなだめる。
そのいつもの様子に思わず笑ったミクに、3人を軽く退けてメイコが笑いかけた。

「どうだった?ミク。私たちからの誕生日プレゼント」

「僭越ながら、ミクちゃんの為だけに用意させていただきましたわ」

メイコの言葉を引き取って続けたルカの言葉に、ミクは幾ら感動してもし足りないと感じた。

「最高だったよ!みんな……ありがとう」

このあとからあとから溢れて止まらない気持ちが少しでも伝わるようにと、ミクはありったけの想いを込めた笑顔でそう言った。
その様子に、メイコもルカも、そして押しのけられていた3人も、本当に嬉しそうにした。
そして再びリンはミクの傍を勝ち取ると、打ち明け話をするように顔を寄せて喋り始める。

「実はねえミク姉、このこの歌、リンたちで作ったんだよ!」

「そうなの!?」

ミクが驚くと、リンもレンも、おまけにルカまで、してやったりと満足そうな表情をしてみせた。
確かにミクがこの曲を聞くのは初めてだったが、きっとマスターがこのために用意したのだろうと思っていたのだ。
言われてみればマスターの曲とは似て非なるものだったかもしれないが、あまりにもマスターが作る曲らしい雰囲気なのだ。
続きを急かすミクに、芝居がかった仕草でえへんと咳払いしたリンが話を始める。

「最初はね、ミク姉の誕生日に何を贈るか、みんなバラバラで考えてたの」

「有名人のミクちゃんは、きっと出先で色々な方から色々なプレゼントを受け取るでしょう。それらと被るのは、家族としてちょっと悔しいと思ったのです」

「それで、オレ達だけが贈れるプレゼントを考えて、歌を贈ろうってことになったんだ」

オリジナルの歌は世界にただ一つだからな、とレンはなぜか胸を張った。リンとルカも頷いている。

「始めは、わたくしとリンちゃんとレン君との3人で考えていたんです。けれどわたくし達は歌は歌えても、作曲の知識なんてありませんでしたから……」

「行き詰っちゃったんだよねー。でもそこに現れたのが救世主!を呼ぶめー姉!」

リンが大げさな身振りでその救世主を指すと、メイコは大げさねえ、と苦笑した。

「私はただたまたま3人が作曲しようとしているのを見かけて、カイトに相談してみたらって言っただけよ」

「お兄ちゃんに!?」

屈辱的でしたが、と舌打ちと共に呟かれたルカの言葉は華麗に流して、ミクは一歩引いたところに居たカイトを見た。

「そうなんだミク姉、なんとウチのカイ兄、作曲できたんだよ!」

興奮気味のレンを見るに、どうやら今回の一件でレンの兄への尊敬度が一気に上昇したらしいことがうかがえる。
実際、多くの曲に触れ歌ってきたミクの目からしても、色目抜きに純粋に良い曲だと思える曲だった。
ミクがその次に口を開く前に、双子が興奮冷めやらぬ様子で代わる代わる作曲の時の様子を話す。

「しかもね、作詞はリンたちにやらせてくれたんだよ!」

「で、メロディーは、オレ達がこんなのがイイって考えてたのをほとんどそのまま組み込んでくれて!」

「そしたらあっという間に和音がくっついて、パートが分かれてって曲っぽくなったの!」

「完成まであっという間だったんだぜ!?ミク姉にも見せたかったなー。見られても困ったけど」

「それにめー姉もあんなこといってたけど、作詞の時困るたびに面倒見てくれたんだよ!」

双子からの滅多にない褒め殺し攻撃に、照れて困ったような笑顔を浮かべつつも、カイトも満更ではないようだった。

「お兄ちゃん、いつの間に作曲できるようになったの?」

「まあ、作曲自体はミクが来る前からだけどね。それより」

ミクの問いにはぐらかす様に答えて、カイトは思わせぶりにメイコと目配せを交わした。
メイコはそれに頷くと、棚から何やら紙の束を取り出すと、その場の全員に一枚ずつ配る。
ぱっと見で何なのかは判る。何かの曲の楽譜だ。
取り敢えず条件反射のように譜読みをして、リンとレンとルカがほぼ同時くらいにあっと声を上げた。

「この楽譜って……!」

視線を集めて、メイコとカイトは悪戯が成功した子供のようににやりとしてみせる。

「その通り。さっきの曲の続きというか、対になるように作った曲だよ」

「ここからは、作詞は私、作曲は引き続きカイト。ご馳走とかは用意できなかったけれど、みんなで一緒に楽しみたいじゃない……ね、ミク?」

ウィンクを投げられて、ミクは顔を輝かせた。
それも当然、家族が作詞作曲した曲に自分だけ参加できないのは、たとえそれが自分の為でもやっぱり寂しいのだ。
色々な物をもらったけれど、何よりのプレゼントだ。

「大初見大会だけれど……これくらいみんな余裕よね?」

メイコの言葉に皆当然のように自信満々に頷いて、やがて最初の一音をピアノの音が高らかに打ちならすと、6人の声で奏でられる歌が部屋を満たした。
歌い終わったら、また初めから。時にパートを入れ替えては音を重ねる喜びを全身全霊で感じ取る。

やがて心が存分に満たされるまで、楽しげな歌声は響き続けた。



生まれてきてくれてありがとう
出会ってくれてありがとう

君と歌う喜び 願わくは
来年の今日もまた 君とこの歌を



◇ ◇ ◇


「そういえば、マスターはほっといてよかったの?」

「マスターはマスターで曲間に合わせるのに必死だったのよ」

「徹夜してたみたいだから、今はそっとしておいてあげた方がいいと思いますわ」

「仕方ないからね。また明日の朝、一番に会いに行ってあげてくれる?」

「うん、わかった!……マスターもしょうがない人だね」

寝てしまった双子に毛布をかけながら、囁くような声で笑い合った。
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