"> 解明Polka はぴば! 忍者ブログ
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某歌ロイドにはまった人がちまちま書いているようです。ブログ名で好きCPがわかる罠

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メイコさんお誕生日おめでとおおおおおおおおおおおお!!!!!!

滑り込みしかできないことに定評のある管理人ですこんばんは。
最後のラブラブいところを書きなおしまくってたらこんな時間になりました。

とても空気を読めるグミちゃん。
ありがち。
ぐだぐだ。
甘い。
今回CPはカイメイのみ。ぽるか色ゼロ。

言いたいことはこれくらいですかね!
メイコさん誕生日なのにカイトばっかり美味しい思いしてる気がしなくもないです。
それにしてもこんなにタイトル決めるのに時間かかった話は他にないです。

まあ↑な感じのお祝いというにはおこがましいかもなお話ですが、よろしければ続きからどうぞ!



全員が配置についたのを互いに確認し合った後、暫しの間をおいて家じゅうの電気が順々に消されはじめた。パチン、パチンという軽快で小気味いい音と共に、家の中には次第に暗闇が広がっていく。
やがて全員が集まっている場所、玄関のすぐ隣に位置するリビングの戸から漏れる光が消え失せて、同時に玄関にひょっこりと青い頭が覗く。電気を消して回っていた彼の手に握られているのは、他の面々の手にあるのと同じ、カラフルな印刷を施された紙でできた、小さな円錐。
準備はいい? と問いかけた声にそれぞれが頷けば、やはり軽快な音と共に、玄関の明かりも落とされた。
後は、本日の主役の帰りを待つのみだ。

ねがいごと

真っ暗になって以来、時折微かな衣擦れの音を拾う以外に、特に何の音も拾うことのなかった聴覚は、敏感に外の気配を察知した。
離れたところで門が開き、また閉じる音。こちらに近づいてくる足音。程なく足音は扉のすぐ向こうに辿り着き、かちゃり、と鍵穴に鍵の差しこまれる音は、玄関の内側の緊張した空気の中でやけに大きく響いた。
誰かが息を詰める音、握りつぶされそうな円錐が小さく軋む音が、その場に張り詰めた空気の慎重さを物語る中、先程の鍵の音よりもさらに大きな音、すなわち扉の開く音が、玄関に響き、そして──

「 HAPPY BIRTHDAY ! 」

ぱっと明るくなった玄関に、響くのは見事に揃ったとは言えないながらも、賑やかに重なった声。
続いて軽い(とはいえ幾つもが重なれば十分に大きな)破裂音と共に宙に舞った色とりどりの紙テープと紙吹雪に、玄関に足を踏み入れようとしていたその人は驚きを露わに目を見開いたが、その顔にはすぐにふわりと笑みが描かれた。

「ありがとう、みんな」

返された言葉を合図に、ミクが、リンが、リンに引きずられてレンが、それぞれが破裂させた、未だ僅かに煙の立つクラッカーを放り出して、その人、メイコに飛びついた。宙に舞ったクラッカーが軽い音と共に床に転がる頃には、第二軍としてルカとグミが続いていて、いわゆるおしくらまんじゅうのような状態になっている。
その周りで放られたクラッカーを回収したカイトとがくぽは、その様子に顔を見合わせ、微笑んだ。

そのおしくらまんじゅうの中心に立つメイコは、頭からかぶったせいで今も身体のあちこちに紙吹雪を引っかけたまま、仕方がないなあと言いたげな、しかしとても幸せに満ちた表情で、弟妹たちやお隣の可愛い後輩の頭を撫でては、次々に降り注ぐ祝いの言葉に嬉しそうに返している。
与えられた設定上そうホイホイメイコに飛びつくわけにもいかない2人は、けれど一歩引いたその位置から目の前の微笑ましい状況を眺めることに満足していたが、なかなか離れようとしない弟妹達の様子に、段々とリビングの方に用意したものが気になってきた。
同時に、メイコから嬉しいけれど動けない、と視線が寄こされる。
それを受けて、カイトはその場の雰囲気を壊さないよう、かつしっかり聞いてもらえるようにと心がけて、結局いつもと変わらないのんびりした口調で声を発した。

「立ち話もなんだし、とりあえずリビングへ行こうよ。折角用意した料理も冷めちゃうし、プレゼントも渡したいでしょう?」

それはまさしく鶴の一声。
その言葉に、それまではてこでも動かないと思わせるほどぎゅうぎゅうとメイコにくっついていた4人とレンは、呆れるほど素早くメイコから離れる。と同時に、今度はメイコの手を取るやら背を押すやらして、リビングへと急かし始めた。

「忘れちゃうところだった! あのねお姉ちゃん、私達今日は料理とか頑張ったんだよ!」
「プレゼントも用意したんだよっ。あたしのが一番だと思うけどね!」
「馬鹿言うなよリン、俺だって頑張って選んだんだかr……」
「わたくしの方がいいものを選んだ自信はありますわ!」
「あなた達、そんなことで喧嘩してどうするのよ」
「とにかくメイコさん、早く早く」
「うむ、料理が冷めてしまうでござる」

幸せそうな苦笑を浮かべながら、メイコはされるがままにリビングへと向かう。その手にあった荷物は、途中でカイトに掬いとられた。

「めーちゃんは今日の主役だからね。それにしても人気者だねぇ」

リビングは未だ電気を消したままで、戸を開いても入り口付近が少し明るく映るだけだった。パチンと軽い音と共に明かりがつけられたのは、メイコがリビングに足を踏み入れた直後のことで、その眩しさにメイコは咄嗟にギュッと目を瞑った。
それから恐る恐る開かれた目に映ったのは、テーブルの上に所狭しと並べられた、普段とは比べ物にならないくらい豪華な料理。ところどころに焦げがあったり、切り方が不揃いだったりと、見た目だけでは決してプロの調理師が作ったものと比べることはできないだろう。けれどそれは、普段は料理などメイコかカイトに任せきりの弟妹達が、メイコの為だけに一生懸命に料理に取り組んだ証で、その味は、どこの誰が作った物よりも美味しくて、何より温かいだろうことを、メイコは知っている。

ただそれだけで思わず涙ぐみそうになったメイコの前に、今度はどこかそわそわとした様子の面々が並ぶ。揃いもそろって手を後ろに回してもじもじとしている様子に、メイコはなんとなく事情を察した。プレゼントを渡したいのだろう。
リビングに入ってすぐのところで、さてどうしたものかと窺いに入った面々に囲まれて、メイコもどうしたものかと思った矢先、すぐ背後、玄関からわざとらしい咳ばらいが聞こえた。
皆のハッとした表情と共に、メイコが振り返れば、予想通り、そこにいたのは先程荷物を置きに行ったカイト。その腕には、隠すでもなく淡いピンクでまとめられた大きな花束を抱えていた。
訂正、きっと隠すにも隠せなと思ったのだろう。それほどに、大きくて豪奢な花束なのだ。

「とりあえずみんな動こうか。そんなに入り口で溜まってても仕方ないでしょう」

これも入れないし、と軽く花束を掲げて見せたカイトに、わらわらと動く。
そうして少し広いスペースまで移動して、やはりメイコを囲んだ面々は、ちょっと苦しい姿勢になりながらも全員でその花束を持った。

「みんな自分でもそれぞれプレゼントを用意したんだけどね、料理ともう一つ、これも、僕ら全員からのプレゼント……」
「ちょっとカイ兄! 1人で喋ってずるいよ!」
「えぇ?」

途中で挟まったリンの突っ込みに、理不尽だ、とでも言うようにカイトが振り返ると、その隙にミクが口を開いた。

「そうそう。あのねお姉ちゃん、これ私たちからの!」
「めー姉様のイメージカラーというと赤なのですけれど、わたくし達のめー姉様のイメージはピンクということで、不覚なことにこの青いのと紫のも込みですが満場一致でこの花束に」
「……。まあそういう訳でござる」
「おめでとうございます、メイコさん」

そうして渡された花束は、メイコの腕いっぱいに柔らかな甘い香りをもたらした。
豪奢なくせに淡くてささやかな花束に、メイコは自分がそういうイメージであったことに驚いた。もちろん不快ではないのだが、どこか不思議な気持ちになったのだ。
そんなメイコの手に、次々にプレゼントが渡されていく。
色とりどりの包装紙に、リボンや造花で飾られたプレゼントは、メイコの腕の中をさらに華やかにしていった。昨年、誰が一番にプレゼントを渡すかでもめて、それでメイコに叱られた経験を持つミク達は、今年はそのことでもめることもしなかったので、メイコはそれにも心の内で胸をなでおろした。
次々にプレゼントを受け取るメイコと渡す弟妹達に、カイトも同じように安心して、ニコニコと微笑んでいた。けれどそれは、カイトがメイコの前に来て、プレゼントを渡そうとした時に、崩されることになる。

「……あ、あんたは最後で十分でしょ」

そう言ってカイトを避けたメイコは、何事もなかった様にルカのプレゼントを受け取った。
ミクやリン、レンといった普段こういう時には心配してあげる(筈の)面々は、今日ばかりはその様子にニヤリと笑った。もちろんルカもである。プレゼントの順番に争わないことにしたとはいえ、やはりメイコが受け取る順番はミク達にとってはそこそこ重要なのである。
だからカイトが避けられた時、不思議に思わないわけではなかったが、それよりもしてやったり、だのざまぁ、だの、にやりと笑いたくなる気持ちの方が大きかったのだ。
そのまま不思議そうにしつつも笑顔をみせるがくぽとグミからもプレゼントを受け取ったところで、メイコの腕の中はいっぱいになった。

「……」

思わず、手の中のプレゼントとメイコの腕の中を無言で見比べるカイトとメイコ、周りのミク達もハラハラとそれを見守る。カイトのプレゼントをメイコが受け取るか、というのもあるのだが、それよりも心配なのは、自分のプレゼントがつぶされるか否かである。
もちろんカイトに皆のプレゼントの上に自分のを乗せるという選択肢を即答できるわけもなく、更にタイミングを見計らったかのように、ぐうう、とお腹のなる音がその場に響いた。

「あ、」

恥ずかしげにお腹を押さえたのはリンで、からかうように何か言おうと口を開いたレンのお腹も、時間差攻撃と言わんばかりに音を立てた。
気まずそうに揃って赤くなる2人に、沈黙を破ったのは、仕方ないわね、というように力を抜いて笑ったメイコ。

「じゃあ、ご飯を頂こうかしら」

その一言に、気まずそうにしていたリンは弾かれたようにパッと顔をあげた。そんな片割れをもの言いたげに見やるレンも、何だかんだで自分も同じことを考えているのだと自覚する。ミクもルカも、キラキラと意気込んだ瞳で、熱くメイコを見つめる。
プレゼントを渡した後のお楽しみは何か? もちろん自分達が一生懸命に作った料理をメイコに解説し、喜んでもらうことなのである。

それまでのやり取りなんてすっぱり頭から振り落として、うずうずと喋りたいオーラを纏う自分達を自覚しながらも、今日ばかりはよしとしよう。そう決心したり自分に言い聞かせたりした後の、ミクとリン、ルカの行動は早かった。
腕を動かせないメイコの背を押したり急かしたりしながら食卓へと急かすミク達と、それに従うメイコに、カイトは戸惑ったように口を開いた。

「えぇ、あれ、ちょっとめーちゃ……」
「あ、後ででいいでしょう、後で! お兄さんなんだから」
「……は? お、お兄さんて」

納得がいかないカイトを振り返り、ミクもリンもルカも、ニヤリと笑った。
その場で呆然と固まるカイトと、食卓につくメイコを見比べて、グミはなんとなく事情を察した。ふふ、大人びた表情で微笑んだグミに、励ます様にポンと肩を叩かれて、カイトは何だかいたたまれない気持ちになった。
更に同情するように両肩に乗せられたがくぽとレンの手に、カイトは叫ぼうにも叫べず、結局心の中で溜め息と共に呟いた。

(僕はそこまで可哀想な奴じゃないと思うんだけどな!!)


◇ ◇ ◇


それからの夕餉の席は大盛り上がりだった。
料理を紹介しては、それを食べたメイコから賛辞をもらい、照れを隠そうともせずに得意げに胸を張ったり。
食べたいだけ食べて、誰が始めたのだったか、交代交代に場を盛り上げるように歌を歌って。時にはしっとり聞かせたり、また時には笑うしかないような替え歌を披露して見せたり。
そうして何時間もはしゃいで過ごして夜中に近い時間になってみれば、殆どの者がはしゃぎ疲れたり酔いつぶれたりで夢の中だった。

酔いつぶれてそんな夢の中の住人の一人になった兄を引きずって、今、グミは玄関に立っていた。
見送るのは本日の主役であるメイコと、結局未だプレゼントを渡せていないカイトの2人だけ。殆ど予想通りのその状況に、グミは心の内でそっと微笑んだ。

本当はグミは、リンレンが疲れて船を漕ぎ始めた辺りでお暇するつもりだったのだが、あまりに散らかった室内に、すぐに帰ってしまうのは憚られた。ごみを集めたり空になった食器を運んだり、寝てしまった双子に毛布をかけたりと手伝っていたら、いつの間にかすっかりがくぽも酔いつぶれて眠っていた。

本当は、それでも早くお暇するべきだったのかな、とも考えたけれど、それはグミの性格が許さなかった。それに、結果的に今日という日がまだ残っている時間に、片付いた状態で去ることができるので、グミはこれでよかったのだと1人頷いたのだ。

「ごめんなさいね、片付けまで手伝わせちゃって」

そう申し訳なさそうに微笑んだメイコの頬は、少し酔いが回っているせいか薄く色づいている。けれど、まだほとんど酔ってはいない。それは普段のメイコの飲みっぷりからは想像もできない状態だったのだが、何となく察しているグミはそれをおくびにも出さずに微笑んで頭を振った。

「いいえ、散らかしっぱなしでお暇するわけにも行きませんし」
「……ありがと」
「もし大変だったら、がっくんは僕が運ぶけど」
「ありがとうございます。でも平気なので、お気持ちだけ」

心配そうなカイトの目の前で、グミはそれまで引きずっていたがくぽを軽々と背負って見せた。
体格差のせいでどうしても足は引きずる形になるが、足が震えることもなく、非常に安心して見ていられる程にしっかりと立っていた。内心では少し予想外の重さに戸惑っていたグミだったが、それを表に出さないように細心の注意を払っていた。
ここでカイトにがくぽを運ばせてしまっては、意味がない。意味がないのだ。
驚きを露わにそれを見守るカイトとメイコに、グミは軽く会釈した。

「それでは、おやすみなさい」
「……え、ええ。またいつでも来て頂戴ね」
「気をつけて帰ってね。おやすみなさい」

そうして玄関の外にグミとがくぽの姿が消え、やがて門の閉まる音がすると、メイコはふう、と息をついた。
2人揃って帰るリビングはもうすっかり片付いている。お祝いの余韻を残すのは、食卓からソファの前のローテーブルへと運んだ、今日開けたばかりのちょっと贅沢をしたワインと、おつまみにと残した少しの料理。そして流しに浸してある大量の食器くらいのもの。
すっかり寝てしまった弟妹たちは、今はもうみんな部屋に運んでしまっていた。

2人並んでソファに座る。
いつもはアイスばかり食べているカイトも、今日は何故かワイングラスを手にしていた。
並んで過ごす静かな時間に、不意にカイトが口を開いた。

「こういうとき、めーちゃんが酔わないって珍しいね」

言われて、ワイングラスへと伸ばした手をぴたりと止め、メイコはハッとしてカイトを振り返った。
探るような瞳と、視線がぶつかる。
何となく心の内を読まれているようで、でも決してそうではないような予感もして、気まずくなったメイコは誤魔化す様に手を引っ込めて視線を外した。

「べ、別に良いでしょう、こういう日くらい」
「うーん、こういう日こそ羽目をはずすものだと思うんだけど……」
「う、まあそうなんだろうけど、けどね」
「うん?」

視線を外していても、カイトがじっと顔を覗き込んできていることが、メイコには手に取るようにわかった。
カイトはただメイコの顔を覗き込むだけで、何も言わずにその言葉の続きを待った。
既に耳まで真っ赤に染まったメイコがその続きを口にするには、とてもとても長く時間がかかって、けれど暫くの静寂の後、その言葉は確かに音になって飛び出した。

「こういう日の、終わりくらい、カイトと2人きりで過ごしたいじゃない……」

段々と尻すぼみになっていった声は、その最後の音までしっかりとカイトの耳に届いた。

もともとメイコがこう考えるようになったのは去年の誕生日の次の日の事。その時はメイコ自身も早々に酔いが回って、まさか日付が変わる前に起きていた、もとい意識がきちんと残っていたのはカイトだけだったということは、その翌日に知ったのだ。
初めて大勢に祝ってもらった誕生日、それはとても幸せなことで、その時にメイコが願ったのは、酷く贅沢で我儘なことだというのは、自覚があった。
けれどメイコは確かに思ったのだ、大勢の誕生日も悪くない、けれど、できればカイトと2人きりで過ごす時間が欲しい、と。

その願いを叶えたくて、今年は飲酒を押さえて、去年と同じように寝てしまった弟妹たちの面倒を見て、片付けて。
正直祝いの席で酒量を押さえることができる自信は無かったのだが、今日ばかりは自分でも不思議に思うほどに飲酒を避けていることができたのだ。
もしも皆が寝てしまうことがなければ、それはそれで嬉しいし仕方ない、そう思ってはいたけれど。

カイトと過ごす時間の為、という思いは、恐ろしく強い原動力になったのだ。

「それはまた、嬉しいこと言ってくれるね」

不意に耳朶を売った声に、メイコはハッと思考の淵から浮上した。メイコが気付かないうちに、カイトはそっと、本当に少しだけ、2人の間の距離を詰めていたために、その声はメイコが思っていたより近くから響いた。

見つめていた青い瞳と、振り返った紅茶色の瞳が出会う。
青い瞳は、嬉しそうに細められて、その瞳の主は情けなさそうに笑顔を浮かべた。

「さっきはプレゼントも受け取ってもらえなかったし、僕もう嫌われたのかと思って」
「なんでよ! 私がカイトの事嫌いになるはず、な……い、で、しょ」


打ち明けるようにカイトがそう呟けば、メイコは目を真ん丸に見開いて咄嗟に口を開いた。そして言葉を紡ぐそのさなかに、自分自身が喋っている内容に気がついたのか、段々と切れ切れになり、音量も落ちる。
けれどしっかり最後まで言い切って、メイコは照れ隠しのように軽くカイトの胸を叩いた。

「わざわざこんなこと言わせないでよ、ばか」
「~~っ、ごめんね、もうこんなこと言わない、僕もうほんとめーちゃんからは離れられないや」

叩いてきたその手を引いて、カイトは感極まったふうにぐいとメイコを抱き寄せると、しっかりと腕の中に閉じ込めた。閉じ込められたメイコは、今ばかりは反抗する気も失せて、小さくもう一度「ばか」と呟いたきり、そっとカイトの背中に腕をまわした。

「でもじゃあ、さっきはなんで受け取ってくれなかったの?」
「それは……」
「うん」
「……プレゼント、開けたくなかったから」
「へ?」

食事の合間、歌の合間に、贈り主に言われるままに、メイコはプレゼントの包みを開けていった。
だから皆、誰が何をメイコに送ったか知っている。カイトのものを、覗いては。

「カイトから貰ったものは、私だけが見ればよかったの! 皆と開けるんじゃなくって、私が開けて、私だけが見て、ひ、とり占め、すればいいの」

それは独占欲のようなもの。
プレゼントを貰うなら、2人きりの時がいいという、ささやかな我儘。
けれどそれがカイトを傷つけてしまったのならば、やはり素直に貰っておけばよかったのだ、とメイコはうなだれる。
メイコのその後悔を、しかしカイトはあっさりと突き崩した。

「め、めーちゃん……」
「なによ」

どうせくだらないって言うんでしょ、と言いたげなメイコを、抱きしめる力が強くなった。

「あーもーかわいい! 何この子かわいい子もう自惚れるよこれ自惚れていいんでしょ!?」
「な、何よいきなり!」
「へへー、嬉しくて仕方ないの。めーちゃんが一人占めしたいと思ってくれた、それがすっごく嬉しいの」

カイトは花が飛び散って見えるような、幸せいっぱいのデレっデレに崩れた笑顔でそうメイコの耳元に囁いた。けれどその表情を知ることができないメイコは、うわっつきながらも低い囁きに、ピクリと身を竦ませた。

暫くしてそんなメイコをゆっくりと腕の中から解放したカイトは、もういつもの微笑みを取り戻していた。解かれた拘束に、メイコはひとつまみのさみしさを覚える。
それが表情からだだ漏れであったために、カイトはまるで子供をなだめるように、メイコの頭を撫でた。

「そこまで期待されると、早くプレゼント渡したくなっちゃうでしょ」

そう言ってメイコの目前に差し出されたのは、薄紅の包装紙に、空色のリボンで飾りつけられた、マグカップくらいのサイズの小箱。その包装が、メイコとカイトのそれぞれのイメージカラーを、目に眩しくならないように気を使った配色であるということに気がついて、メイコはそれだけで心が温まるのを感じた。
もっとも、同時にそれが自分たちなのだとすぐに連想してしまう自分に突っ込みを入れることも忘れなかったが。

受け取ったその箱は、軽くもなく重くもなく、メイコはカイトに言われるままにその包装を解き、箱を開いた。

「ばら……?」

細い針金で可愛らしく仕立てられた、小さなハート型の小さな取っ手付きの華奢な籠。取っ手には細くて真っ赤なリボンが結ばれていて、その下、籠の中には、繊細なレースに包まれて、青いバラを中心に据えた小さなアレンジが、静かに美しく咲き誇っていた。
そう、青いバラ。

「プリザーブドフラワーって言ってね、大事にすれば10年は持つ、枯れない花、なんだって」

カイトの説明を聞きながら、メイコはそのアレンジの中心の青いバラをじっと見つめる。
贈り物に、わざわざメイコの色でなく、カイトの色を持ってくるところが憎らしい。

メイコはカイトのもので、カイトはメイコのもの。

何度も囁きあったことのある言葉だったが、こうして"物"の形をして贈られると、改めてその意味を思い知っていくような気がした。

「ありがとう、大事にするわ」

メイコはふわりと笑顔を咲かせた。それはそれは幸せそうな笑顔で、カイトも微笑んで頷き返した。そしてその後に、ふと大げさに考え込むポーズをとってみせた。

「いやでもね、それもすっごく悩んだ末に選んだんだけど……今日のめーちゃんの話を聞いてたらさ」
「何よ」
「うん、誕生日プレゼントは僕、って方が良かったかなって……」

言いながら、まいていたマフラーを手際よく首の前でリボン結びにして、カイトは首を傾げた。そしてメイコはと言えば、呆れ果てて何とも言えなくなってしまった。もちろん、そういう発想をして、実際にリボン結びを作ってしまうカイトへの呆れもある。けれど、何より呆れたのは、決してそれが嫌ではない、寧ろ本当に嬉しいと思っていた自分自身に対してだった。

複雑そうな表情で口を開かないメイコをどう解釈したのか、カイトはそれまでの流れを全く気にしていない風に口を開いた。

「それはともかく、めーちゃん、プレゼントはもう一つあるんだけど」
「ええ」

その内容は、メイコも知っている。何せそのプレゼントをお願いしたのは、去年のメイコなのだから。
そしてきっと、今年も。

「何でも一つ、めーちゃんのお願を聞いてあげる」
「……それじゃ、そうねぇ」

悪戯っぽい瞳で、カイトはメイコに囁いた。メイコは、わざとらしく考え込んでみせる。
答えなんて、もうとっくに決まっているのだ。

たった今貰ったばかりの青いバラの籠をテーブルに置いて、メイコはそっとカイトの手を拾った。

「また、来年の誕生日も同じプレゼントを頂戴?」
「喜んで」

初めて2人で祝ったメイコの誕生日から、ずっと続くやり取り。
来年も同じやり取りができるように、できますようにと、願う2人の思いが込められている。

拾われた手は逆に手を取りかえして、それからぐっと引っ張った。
抵抗をしない身体は、すんなりとその腕の中に落っこちる。

見上げた瞳と見下ろす瞳がぶつかって、2人は互いの瞳の中に、幸せに満ちた自分自身の顔を見た。
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