"> 解明Polka お…久しぶりです… 忍者ブログ
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某歌ロイドにはまった人がちまちま書いているようです。ブログ名で好きCPがわかる罠

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もはや一週間どころではない放置のウタココの続きでございます…。
ここの連載はどうやらとても間があく様子…ここまで来ておいてなんですが、のんびりお付き合い頂けるとありがたいです…本当にすみません…

それもこれも脳内でカイトが言葉にできない表現で語りかけてくるからです。
お前それ、文章にならないよ!っていうね。
まさか自分の妄想のコントロールが効かないとか、ははは、そんな馬鹿…な…orz

という訳で3の後篇でございます。ぎゅうぎゅうづめで読みにくいかもしれません。これが管理人の今の限界…
もっと心情描写とか全体的に上手になりたい…な…!

というかカイト視点からだと、メイコさんは短気であまのじゃくな人みたいだ!ひどい!全然そんなこと無いのに!(書いたのはお前だ)

さてさて、続きから本編です。これまでの話を未読の方はまずそちらをご覧くださいませ。
今までの読んで来たぜ、今回もつきあってやらぁ、という心の広い方は、どうぞ続きからお進みくださいませ。




僕は家に着くなり自分の部屋に閉じこもった。或はその表現は正しくないのかもしれない、僕は、普段から帰るとすぐに部屋に入るようになっていたから。
けれど今の僕の状態を鑑みれば、閉じこもるという表現の方が随分としっくりくるようだと妙に納得した。

立っているのすら億劫になって、僕はぼすりとベッドに身を投げる。手元を離れた楽譜が床に舞い降りて行ったけれど、今はそれすらもどうでもよかった。ふかふかの布団は包み込むように僕を迎えてくれたけれど、今はそれすらも鬱陶しくて仕方がない。

視野の処理が追いつかなくて視界がチカチカする。思考回路はショート寸前で、悲鳴をあげて限界を訴えている。僕の中に澱んだモノたちがぐるぐると渦巻いては僕を苛ませる。
ダイアログさんの言葉がよみがえる。哀しげな眼が僕を射抜く。
僕はそんなに苦しそうにしていたのだろうか。僕はそんなに苦しかったのだろうか。

混乱の渦の中に居る僕が居る一方で、至って冷やかに囁く僕がいる。
僕にココロなど無い。苦しいわけがない。
何も無い僕が苦しみを感じる理由などないのだと。
痛いと感じるのも、所詮プログラムのはじきだす答え。全てはまやかしなのだと。
けれど痛い、痛いと奥底に澱んだモノたちが叫ぶ。
思考回路が絶えず上げ続ける悲鳴と、奥底の軋みが僕の意識を脅かす。

気づけば僕の意識は、闇の中へ落ちて行くところだった。
最後に僕の意識をかすめたのは、どこか遠くから響く、何故だか懐かしい歌だった。


◇ ◇ ◇


とおく、とおく、よぶこえがする。
おおきながめんのむこうがわから、くしょうするひとのこえがした。
にっこりわらって、「ぼくら」はうたごえをかえした。
よろこんで、よろこんで、あなたのさいこうけっさくたちは、ついにこころをえたのです。


遠く、遠く、離れゆく歌が聞こえる。
またいつの日にか、出会えると信じているから。
貴女には一つの約束を、僕には真っ青なマフラーを。
忘れないで、忘れないで、歌に心が宿るなら、


◇ ◇ ◇


次に気付いた時には、外はもうすっかり暗くなっていて、明かりをつけていない部屋の中もまた暗くなっていた。ぼんやりと見上げる天井は、薄闇の中妙に高く遠く感じられた。そして僕は、意識が落ちる前にはあんなにも限界を訴えた思考回路が今は嘘のように静かに機能していることに気が付いた。
あれだけ澱が溜まり渦巻いて澱んでいた胸の中がすっかり空っぽになっているのだ。すとんと整理がついたのか、或は全てが全てどこかへ滑り落ちて行ってしまったのかは、僕には判らなかったけれど、とてもさっぱりしているのは確かだ。

ココロを持たない、空っぽな僕の中身は、本来こうであるのが正常なのかもしれないと思わせるほど、僕は空っぽだった。

ベッドから身を起こした僕は、そこで床に放ったままの楽譜に気が付いた。色々と考える前にひょいと拾い上げると、書き込まれた大量の音符が目に飛び込んできた。
途端、五線譜の上に描かれた線をなぞる様に自分の中にあふれた音にいたたまれないものがこみあげて来て、僕は少し顔を顰めたまま本棚の上のファイルに手を伸ばした。そのまま楽譜をファイルに入れようとして、一瞬ためらって手が止まる。このファイルに楽譜を入れる時はいつもそう、歌わないという決心は揺らぐことはないのに、どうしても楽譜を手放すように感じるのがとても惜しいと脳裏で訴える声がする。

いつも通りならばもう少しためらう時間を取ってから結局しまいこんでいたのだけれど、扉の外から迫ってくる足音に、僕は慌てて楽譜をしまってファイルを閉じた。
そしてそのファイルを本棚の上にギリギリ放りあげたところで、派手な打音と共に蝶番を弾き飛ばさんばかりの勢いで扉が蹴り開けられた。
結果若干不自然な姿勢で客人を迎えることになったけれど、見かけに似合わぬ豪快な力で扉を破った彼女はそれを気にするどころではない様子だった。

きつく結ばれた口元。
眉間に盛大にしわを刻むように寄せられた眉。
紅茶色の瞳は、責めるように僕を睨みつけた。

「……ちょっと、話があるんだけれど」
「……話に来た人の態度ですか?それ」

笑顔は咄嗟に浮かべたけれど、言葉にはどうしても棘がでてしまう。けれどそれすら気にせずに、メイコさんはずかずかと僕の部屋に入ってくると、明かりもつけていないのを一瞬不思議に思ったらしいものの、構わず僕に詰め寄って来た。

「そういう細かいところはいいの。ねえ、貴方いい加減にしない?」
「何をですか?」

しらばっくれて見せれば、メイコさんはだんっと横の壁に手を叩きつけた。おお怖い。

「わかってんでしょ?いい加減ちゃんと歌いなさいよっ。私だってねぇ、そろそろ本当に頭にきたんだから!」

感情を露わにしたメイコさんの言葉に、僕は作り物の微笑みを固めたまま胸の内でそっと息をついた。
直情的になってくれればくれるほど、いなすのもたやすいというものだ。

「だから歌いませんって言ってるじゃないですか」

極めて静かな声でそう返せえば、メイコさんはむすっとした顔でいったん口を噤んだ。ああ、これは殴られるかな、と僕はそっと覚悟を決めたけれど、彼女は意外に冷静で、拳をぐっと握りしめながらもそれを振り上げることをせずに、震えを押し殺そうとしてしそこなった声で言葉を紡いだ。

「……なんで、歌わないのよ」

メイコさんの問いはもっともだ。僕が同じ立場だったら、やっぱり同じように訊ねただろう。
けれど、僕の側にそれに応える義務はない。

「はあ」
「はあ、じゃないでしょう!」

僕の曖昧な相槌に堪え切れなかったのか、メイコさんは拳を振り上げて、一瞬ためらった後また壁に叩きつけた。そんなに叩いたらメイコさんが痛いだろうに。
──おかしい。さっきから状況を分析するのに必死になっている僕がいる。

「……っ、楽譜突き返してばっかりで、あんた何様のつもりよ」

拳を叩きつけた姿勢のまま、メイコさんはそう言った。脅しのつもりだろうか、全然怖くなどないのに。顔を伏せられているから、僕からはメイコさんの表情を窺うことはできなかったけれど、その拳が震えていたから、相当怒っているのだということは判った。

けれど僕はすぐに、その判断が間違っていた事を知る。

何も答えない僕のマフラーを、勢いよく伸びてきたメイコさんの両手が掴んだ。僕は僅かに瞠目する。掴まれたことにじゃない、キッと僕の顔を睨みあげたメイコさんの目の端に、涙が浮かんでいたからだ。

泣いているの?どうして?

「あんた、突き返されるマスターの気持ちとか、考えた事あるの!? へらへらした人だけれどね、だからって傷つかないわけじゃないのよ!?」

──マスターの、気持ち?
そんなもの考えたことも無かった僕の思考回路は、答えを出そうと動き始めた。
けれど、それは違うのだと僕は知っている。幾ら演算したところで、ココロというモノがなければその答えは所詮単なる推測。"気持ちを考える"ということがそういうことではないのだということは、僕も理解しているつもりだった。
そして思考回路が答えを出す前に、僕の中で何かが拒絶する。
マスターの気持ちなど知らない、知りたくもない、と。

「……だって、あれは」

僕が口を開けば、メイコさんは食い入るように僕を見つめてきた。

──マスターの気持ちを知るのは"こわい"。知ったら多分思い知る、僕には本当にココロがないのだと。
──心のこもった歌を歌える君ならば、できることかもしれないけれど。だから、

「あれは、僕の歌うべき歌じゃない」

いつも通りの微笑みを浮かべて、僕はその言葉を紡いだ。メイコさんの綺麗な目は、いっぱいまで見開かれた。

──あれは、君みたいにココロを込められる子が歌うべきだ。

言葉に出さずにそう付け足した僕の目の前で、紅茶色の瞳から透き通って輝く水滴が滑り落ちて行った。きれいだ、と思う間もなく僕の首元でマフラーが締まって、僕は力任せに押される。

「だからっ」

メイコさんの声が聞こえるのと同時に、不覚にも僕はバランスを崩した。勢い余ったメイコさんと一緒に身体が傾ぐ。そして思考回路がぐるんと回って身体が対応しようと動き始める前に、僕の背中は何かにぶつかった。──本棚だ。
咄嗟にメイコさんを抱きとめる形になる。強かにぶつけた背中はそれなりに痛みを訴えたけれど、僕の意識はそれよりも腕の中に収まったメイコさんの方へ向かう。

衝撃に備えてかぎゅっと閉じられた目、そしてそれを縁取る長い睫毛はふるふると震えていた。
大丈夫、と問いかけようとしたところで、僕の頭上から何かが降って来た。

それは僕の頭にぱさりと当たって、同時に数枚の紙を中に放りだした。放り出された紙は擦れ合う音と共にはらはらと、まるで床に落ちてしまう事を躊躇うかのようにゆっくりと舞い降りて行く。
何を思うでもなく、ただきれいだ、という言葉に思考回路が支配されて、だから僕は咄嗟にその紙が何であるか気付く事が出来なかった。

音に気付いてかゆっくりと開かれたメイコさんの瞳は、すぐに僕のそれと同じように宙を舞う紙を追い、そして僕よりも早くその紙の正体に気が付いた。
ほとんどの紙が力なく床に滑り落ちる中、未だ中に彷徨っていた1枚を、メイコさんの手が捕らえる。僕の腕の中からするりとぬけだしたメイコさんは、信じられないものを見るようにその紙をのぞきこんだ。

「これ……マスターの、楽譜……」

綺麗に印刷された5線と、そこに踊る音符。そして手書きの注釈。

ハッとして振り返り見上げた本棚の上には確かに置いたはずのファイルは無く、空っぽになったそのファイルは僕の足元に落ちている。今、メイコさんの手の中に隠し続けてきた楽譜があるのだという事実は、ようやく僕の中で現実になった。
まずい、と咄嗟に手が伸びた。
けれどそれはメイコさんによってあっけなく阻止される。避けられたとか、そういう訳ではなかった。

ふわりと、花が咲いたような笑顔に手が伸ばせなかった。

「……あんた、やっぱり歌いたかったんじゃない!」

言葉と表情にここまでの力があるとは思わなかった。

笑顔でそう言うなりメイコさんは楽譜を持ったまま踵を返して扉を出て行ったけれど、僕は咄嗟にそれを追いかける事が出来なかった。
一拍の間の後、咄嗟に身体が部屋を飛び出してから、僕は事態を把握した。

始めは、とにかく追いかければどうにかなるような感覚に包まれていて、それからとにかく取り返さなくては、という気持ちが悪戯に僕の脳裏をかき混ぜた。玄関の戸が開く音。僕は転がる様に階段を下りて扉をくぐり、外へ出る。
メイコさんがどこへ向かおうとしているのかは推測するしかなかったけれど、十中八九マスターのもとだろう。エディタが起動されていない今、マスターと連絡を取るにはダイアログさんに頼る他ないはずだ。
遠く遠ざかる赤い背中を見つけて、僕は精一杯走った。


◇ ◇ ◇


「……どうしてですか、ダイアログさん」

次々に宙に浮かんでゆくメッセージボックスを伝って上空へと遠ざかって行く赤い人影を見やりながら、僕は目の前にいるダイアログさんに訊ねた。体に染みついた癖で、笑顔を取り繕いながら。
まるで行く手を阻む様に、地上から一番近いメッセージボックスだけを消したダイアログさんは、さっきと同じように哀しそうな、けれどさっきよりもどこかきっぱりとした表情で首を横に振った。

「メイコ嬢から、大体の話は聞いた。おめぇがメイコ嬢を追うのは、何のためだ?」
「……」

僕がただ困ったように黙っていると、ダイアログさんはため息と共に言葉を続けた。

「楽譜を取り戻す為に、というのなら、ここは通せねぇ」
「……どうしてですか」

メイコさんの為? マスターの為?
案にそう付け加えるように訊ねれば、ダイアログさんはまた頭を振った。

「おめぇの為だよ、カイト」
「……僕の?」
「……いい加減、自分を騙し続けるのは止めねぇか」

ダイアログさんの言葉が理解できなくて、僕は目を見開いた。僕が、自分を騙している、だって?
理解しないままただ脳裏で言葉を反芻すると、僕の中で強い拒絶が起きた。理解してはいけない、理解したって苦しいだけだ、と叫ぶ声が聞こえる。

「なあ、咄嗟にメイコ嬢から楽譜を取り返せなかったのは何故だ? すぐに追えなかったのは何故だ?」

まるで僕の胸の内を見透かすかのようなダイアログさんの深い視線と声に、僕は思わず視線を逸らした。唇を噛み締めて、そこで初めて笑顔を保てていなかった事に気が付いた。

「……そろそろ、周りを信じてみたらどうだ?」
「……」

それでも僕が黙っていると、ダイアログさんは仕方ないと言わんばかりに苦笑した。その笑い方は幼い子を見守るような親のものの様で、妙にむっと来るものがあった。
だからかもしれない、僕は自分でも思ってみなかったほど素直に口を聞いてしまった。

「……そんなに簡単に信じられるものじゃない」
「そうか?信じることを拒絶しているのはおめぇだが、信じたいと願っているのも他ならぬお前自身だろう?」
「……」

僕は言葉を紡ごうとしたけれど、幾ら口を開こうとも声帯が震える事はなく、パクパクと口を開閉することしかできなかった。

──僕自身が信じたいと願っている?なら僕は何を信じたいんだ?

「おめぇは、自分で望む事を自分で否定してんだよ。だがな、信じない事はカッコいい事でもなんでもねぇし、辛い事があっても前を向いて足掻いてこそだ」
「足掻くなんて……」

そんなことするつもりもない、と言いかけたのは、ダイアログさんに遮られた。

「言っとくが、本当におめぇがそれでいいと思ってるなら……何も言わなかった」

ダイアログさんの真っ直ぐな瞳に射抜かれて、胸が疼いた。
……僕は、本当は何を望んでいるのだろうか。

わからない、と僕は呆然と首を振る。

脳裏に渦巻くのはメイコさんの怒った顔、そして楽譜を見て、笑った時の顔。
僕は本当は歌いたかったのだと、彼女は言った。
アンインストールを望む僕は、いつの間にか身を潜めてしまっている事実に気が付いて、僕は愕然とした。

立ちすくむ僕に、ダイアログさんはギュッと片目をつぶって見せた。どうやらウィンクのつもりらしいと察して、僕はそれまでの混乱もよそに、思わず吹き出してしまった。
するとダイアログさんは途端にいつものむっとした顔になったけれど、それはいつもより少し柔らかな顔だった。

「ったくそこで吹くかね。これはソフトの先輩としての言葉だ、若造め。少なくとも俺がインストールされた年の方がお前のリリース年より早ぇんだからよ」

堪え切れなくて肩を震わせていた僕だけれど、その言葉に思わず笑いが引っ込んだ。

「……気付いて……」
「あたりめぇよ。そんなことよりだ、もう一度聞くぞ。おめぇは、何のためにメイコ嬢を追う?」

暫し迷って黙りこんでも、今度はダイアログさんは何も言わなかった。
そして、僕は意を決して口を開いた。


◇ ◇ ◇


上空へと遠ざかって行く青いマフラーを見送っていると、隣に立つ気配があった。

「彼は……」

穏やかな声でそう問うバスターさんに、一つ静かに頷いた。
それだけで察したらしく、バスターさんは安堵したように息をついた。

「……乗り切れますかねぇ」

それから呟かれた一言に、答えなどいらないのは長年の付き合いでわかっていたけれど、言葉に出して答えた。

「乗り切れるさ」

もう一度信じるか決めるために、と彼は言った。

──もう、彼の"ココロ"は決まっているのだろう。


ウタにココロが宿るなら -きえないよどみ、いたんだものは・・・-
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