"> 解明Polka グミちゃん来たよ! 忍者ブログ
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某歌ロイドにはまった人がちまちま書いているようです。ブログ名で好きCPがわかる罠

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グミのキャラについては散々悩んでいたのですが、とある拍手コメントを頂いてから自分の中で色々と漲って来たので書いてみました、グミちゃん登場編です。
というか、妄想を漲らせたら色々止まらなくなって、心理描写に凝ったら迷走して無駄に長くなりましたorz

書いててグミのキャラは結構気に入ったんですけれど、変に設定作っちゃったんで早めに回収したい……な!

と言う訳で、9/19に拍手コメント下さった方、遅くなったうえに非常に斜め上の発想をかましましたが、以下に納めましたSSで返答に代えさせて頂きます!ありがとうございました。

歓迎と言うよりもぽるか色の強いお話ですが(その割にはがくぽがテラ空気ですが)、グミちゃんとルカちゃんで仲良くなり隊的なそんなお話じゃないでしょうか。
あと、カイトが出張ってるところは正直誰でもよかったんですけれど、管理人がカイト好きでいろいろ伏線だったりするので仕方ないですすみません。
グミさんが、予想外に良い子ではっちゃける子になりました。最後の彼女の一言は、確信犯です。
取り敢えず無自覚嫉妬ルカさんは美味しいねと、そんなお話だと思います。


無駄に長いお話ですが、読んで下さるという心の広い方、続きからどうぞー。




がくぽのもとに妹が来ると言う話は、にわかにルカ達の日常を賑やかなものにした。

どうやらがくぽのマスターはうちのマスターにまた散財とか何とかぼやいて見せたらしいが、その表情はデッレデレだったとマスターは証言していた。

既に発売開始前からネットを賑わわせているその少女の姿は、ルカもネットワークを回っていた時に何度か見かけた事があった。ミク辺りはもう他所の子と一緒に仕事をしたこともあると言っていた。
ミクよりも黄色寄りの緑の髪を肩の辺りで跳ねさせて、黄色とオレンジの服を纏った明るくて素直そうな可愛い女の子。

彼女が自分達の傍にも来るということは、ルカにとっても喜ばしい事ではあった。
ミクは同年代の友達ができるということで大はしゃぎで、あれを歌おうだの、あそこのお店を紹介しようだの、楽しそうに計画を立てていたし、リンは新しい遊び相手が来ると大喜びだ。レンは喜びつつも、また常識人じゃなかったらどうしよう……とぼやいていた。
メイコとカイトは年少組よりは落ち着いていたけれど、着々と歓迎会の準備を主導している辺り、やはりかなり楽しみにしているようだ。

そして、当事者であるがくぽは言わずもがな。
日々の生活は全くいつも通りだし、これと言って大げさにはしゃぐということも無かったのだが、ルカの目には鬱陶しく映るくらいに彼は妙に生き生きとしていた。

そう、がくぽに妹ができるのは、ルカにとっても喜ばしい事。

なのになぜかルカは、胸の内がむかむかするような、嫌なイライラに囚われていた。
そのイライラの原因が自分でもよくわからなくてもやもやと過ごしている内に、彼女がやって来た。


スキ?キライ?


がくぽに手を引かれて一家のリビングに入ってきた少女に、皆の視線は一気に集まった。少女は一瞬キョトンとした表情を見せたけれど特に視線にひるむようなそぶりは見せず、にっこりと笑い返した。

「こちらが今日から拙者の妹になった……」

がくぽが少女を示して紹介しようとした矢先、彼女はぴっと手をあげると、自分から自己紹介をした。

「めぐっぽいど、通称グミです!今日から兄様の妹になりました。よろしくお願いしますっ!」

言い終えると手を降ろして深々と礼をした。先に突っ走ったその様子にがくぽは苦笑を浮かべていたけれど、グミを見るその視線はとても優しさにあふれていて、それが何故かまたルカの胸にチクリと刺さった。
顔をあげたグミににっこりとほほ笑んでメイコが手を差し出す。

「こちらこそよろしくね。私はメイコ」

「はいっ!いつも兄様がお世話になっていたそうで……」

「こら、グミっ」

笑顔でその手を握り返したグミがそう丁寧に返すと、隣からがくぽが若干慌てた声で制止をかける。

「だって、本当の事でしょー?」

むすっと口を尖らせて言うグミにがくぽが溜め息をつく。
そのやり取りを見ていて、ルカの胸にはやっぱり引っかかる何かがあった。

「まあ、僕たちもがっくんには色々お世話になってるからね。お互い様だよ。で、僕はカイトだよ。初めまして、グミちゃん」

横手からフォローするようにカイトがそう言うと、リンとレンがすかさず後に続いた。

「で、あたしは鏡音リンだよ!いっぱい遊ぼうね!」

「オレはレン。常識ありそうな奴で安心した。よろしくな」

「……常識ありそうな?」

レンの言葉にグミが首をかしげる。聞き返されたレンははっと言葉に詰まって、それからリンとミクの顔をちらりと見てから何でもないと首を振った。

「それは、まるで私たちに常識がないと言いたいみたいな言い方だねえレン君?」

ミクがわざわざレンの背後に回ると、リンと声をそろえて若干低く作った声でそう言う。
両斜め後ろから楽しげな低音の攻撃を受け、レンはひきつった笑いを見せた。可哀想だが随分とそれが様になっている。

「いやいや滅相もない」

「……ふーん?ま、いいや」

そう言ったミクは、まだレンをじっと見ているリンの頭を宥めるようにぽんぽんとなでると、にっこり笑ってグミに向き直った。

「私は初音ミク!同じ年頃の女の子って聞いてて、すっごく楽しみにしてたんだ!よろしくね、ぐみちゃん」

「こちらこそ、やっぱり同じ年頃の子がいるって心強いなあ」

照れたように笑ったグミは、それからルカに向き直った。
それを受けて、ルカははじめて残るは自分のみだということに気付いた。胸の中でちくちくと刺さるものは依然としてあったけれど、笑顔を崩していたつもりはない。ルカはできるだけ自然なそぶりを装って、口を開いた。

「私は巡音ルカです。よろしくお願いします」

グミはルカの名前を聞くと、何故かはっとしたように目を開いた。唇が僅かに動いたのは、正面から見ていてよくわかった。あなたが、と動いたようだった。その反応が解せなくて、ルカはこてんと首を傾げる。
そんなルカの前でグミは1人何かに頷くと、笑顔で手を差し出してきた。

「こちらこそよろしくお願いします!」

その手を握り返しながら、ルカはやっぱり首を傾げた。


◇ ◇ ◇


それから数日で、グミはすっかりがくぽともルカ達の方の一家とも馴染んでしまった。
今も仕事から帰って来たミクやリンと一緒に何やら雑誌を読んで大騒ぎしている。そのミクの頭には、グミがしていた赤いレンズのゴーグルがつけられている。どうやらつけさせてもらったらしい。

グミはとても礼儀正しくしっかりしていて、ルカ達も馴染むのには全く苦労しなかった。
というか、気づいたら馴染んでしまっていた、と言った方が正しいかもしれない。
ルカは自分がこの家に来てすぐの頃の事を思い出して、そんなグミに素直に感心したものだ。

そしてこの数日で、彼女に関して判明した重要なことが一つ。

「お邪魔い致す。グミ、そろそろ夕餉の準備をする故、迎えに……」

「あ、兄様!!」

玄関の扉が開く音がしたかと思うと、リビングの戸を開けてがくぽが入って来た。後ろにカイトがいる辺り、玄関前で鉢合わせでもしたのだろう。何故かこの2人はよく玄関前で鉢合わせしているのだ。

がくぽの声に雑誌から顔をあげたグミは、同じく顔をあげたミクとリンが挨拶の為に口を開くよりも早く立ちあがり、突進するような勢いでがくぽに突っ込んでいった。

そしてそのまま、グミはがばりとがくぽに抱きついた。

そう、抱きついたのだ。その様子にルカはまた胸の奥がちりちりと疼くのを感じた。
胸の奥の痛みは、グミに出会った数日前から確実に増してきていた。仲良くしたいのに、その疼きがどうしても邪魔をする。訳のわからないそれは、自分に問いかけるともっとこんがらがってくるけれど、ちらりと感じるのは、訳のわからない嫉妬と、言いようのない虚無感。

「こらグミ。お主も女子なのだからもっと慎みを持てと……」

「んー?いいでしょこのくらい。減るもんじゃないもん」

がくぽが困った顔をすると、兄様のことが好きなんだから仕方ないよー、とグミはそう反論しつつも笑ってがくぽから離れた。

この数日で判明したこと。グミはかなりのお兄ちゃんっ子なのだ。

もともとスキンシップ好きな性格らしく、初対面の挨拶をしたその日こそ大人しくはしていたものの、数日経つその間に、誰もが一度はグミに抱きつかれていた。真っ先に仲良くなったミクとリンはきゃっきゃとはしゃぎながら応対しているし、メイコは大人の反応で流していた。
けれどやはり異性であるカイトとレン、特にレンは、抱きつかれるのは複雑らしい。真っ赤になりながらグミを引き剥がし、それをミクとリンにからかわれている様はなかなか見ものではあったけれど。
もちろんルカも例外ではなく、純粋に好意を寄せられるのは不快に思うはずもなかった。

そして、ミクとリンを押さえて抱きつかれた回数が一番多いのは言わずもがながくぽだった。
がくぽ自身はどうやら抱きつかれることに関しては頭を抱えているらしいのだが、そのほかの妹に関する事にはもうデレデレしていて、グミが可愛くて仕方ないと言った風だった。がくぽに可愛がられているグミは、本当に女の子らしくて、明るく素直だし、同性の自分から見ても可愛いと思った。
そんなグミを、ルカは何故かとてつもなく羨ましく感じる。理由は自分でもよくわからない。

がくぽたちが帰って行ったのを、ルカはいまいち晴れ切らない気持ちで見送った。

それからもやもやした気持ちが嫌になって仕方なくて、とにかく部屋を出て行こうとした。
夕飯までもう少しかもしれないけれど、少しでもこの部屋にいる時間を短くしたかった。
けれどそれと、ソファの方からミクの声がするのと、メイコが台所からリビングに顔をのぞかせるのとは同時だった。

「あっ、ぐみちゃんゴーグル忘れて行っちゃった!」

「ミクー?マスターが今すぐすぐ来いって呼んでるわよー?」

声をあげたミクは、すぐにきょとんとした顔でメイコの方を振り返り、それからまたあっと口元を押さえた。

「いっけない、私、後で来いってマスターに呼ばれてたんだ……!」

途端、2つの事に板挟みになったミクはオロオロと困りきった顔をする。
けれど救いの手は意外に早く差しのべられて、そんなミクの手からすぐにゴーグルが取り上げられた。

「ミクはマスターのところへ行っておいで。あの人親馬鹿だから、ミクに来てもらえないと後で面倒くさいくらい騒ぐから」

そう言ってにっこり笑ったカイトを、ミクは戸惑うように見上げる。

「でも……」

「大丈夫、ゴーグルは返しに行っておくから。何か伝言ある?」

「……。じ、じゃあ、ごめんね、と、ありがとうって伝えておいて?」

「わかった」

カイトが頷くのにホッとして、ミクは準備もそこそこに家を飛び出していった。マスターに呼ばれた時は録音部屋の方に必要なものは全部揃っているから、特に持っていくものもないのだ。

ミクを玄関で見送って、さて今度こそ部屋に帰ろうとルカが皆に合わせてくるりと扉に背を向けると、後ろから肩にポンと手がのせられた。振り返るとカイトがやっぱりにっこりと、けれどどこか困ったような笑顔で口元に一本指を立てていた。その視線は一度リビングの方に向けられて、すぐにルカに戻ってくる。
ルカがあからさまにむすっとした顔で、けれど仕方なく足を止めると、カイトはグミのゴーグルをルカに手渡した。
反射的に受け取ってから抗議の視線を送ると、カイトは靴を履き、玄関の取っ手に手を描けながらルカを促した。

「一緒に行かない?」


◇ ◇ ◇


何故のこのことついていく気になったのかは判らない。けれどルカは今、何故かカイトと共にがくぽとグミの家に向かっていた。
とは言っても、お互い家はお隣同士、歩いて1分もかからない。
けれどその途中で、カイトが不意に足を止めた。仕方がないのでルカも足を止めると、カイトが話しかけてきた。

「グミちゃんはいい子だよ」

「……?」

「だからね、僕はルカなら彼女の良いお姉さんになれるんじゃないかって思うんだ」

訳がわからない、と不信を視線に込めてカイトを見返すと、カイトは苦笑して見せた。妙に様になっていて癪だ。

「ちゃんとお話ししてごらん、ってこと」

妙に子供扱いされた気がして、ルカが言い返そうとしても、カイトはさっさとまた歩いて行ってしまって、インターホンを押している。
ルカが追いついた時、応答しに玄関に来たのはグミだった。

「はいはーい?」

視線だけで促されて、ルカはグミにゴーグルを手渡した。さっきミクが頼んでいた伝言も、覚えていたので伝えてしまう。

「これ、貴女のゴーグルですよね。ミクちゃんは来れなかったのだけれど、ごめんね、ありがとうって言っていたわ」

「それでわざわざ?ありがとうございます、助かりました!」

笑顔を見せたグミは、そのままの勢いでルカにぎゅうぎゅう抱きついてきた。

「ちょ、っと、グミちゃん?」

「えへへ、ありがとうございますー」

その様子を横から見ていたカイトが、グミに訊ねた。

「がっくんは、中?夕飯の準備してるんだよね?」

「あ、はい、そうですよ!」

「じゃあ」

グミの答えに、カイトはしばしルカとグミを交互に見やってから何やら1つ頷いて言った。

「ちょっと男同士の相談してくるから。手伝いは僕がしておくから、君たちは2人で話していてくれるかな?」

言うなり、カイトは答えも待たずに家の中に上がって行った。

取り残されたルカは、同じくきょとんとしているグミと顔を見合わせた。
どうしたものだかわからなくて口をつぐんでいたルカから離れて、グミは手近な位置にある縁側を指差した。

「……取り敢えず、立ち話もなんですし、座りませんか?」

ルカは素直に頷いて、グミの後について縁側に行く。

取り敢えず、全く面倒な事をしてくれた青いのには、後で文句を言ってやろうと心に誓った。


◇ ◇ ◇


「……ルカさんは、私が嫌いですか?」

縁側に並んで、しばしの沈黙の後、グミがそう唐突に訊ねてきた。
予想外の質問に、ルカは思わず目を見開いてグミを見た。

「え……!?」

るかのその反応を見越してか、グミは未だルカと目をあわさず顔を前に向けたまま続けた。

「私、実はルカさんと会うのを楽しみにしてたんです。兄様ったら、ルカさんの話ばかりするから」

凄いんですよ、クールなのに可愛くて、深入りはしないけど優しいんだって、褒め倒しだったんです、と楽しそうにグミが喋るのを、ルカはさっきとはまた別の意味で呆然として聞いていた。

「でも、ルカさん、私を見ている時、あんまりいい思いしていませんよね」

そこで初めて、グミはルカの目を真っ直ぐに見てきた。
その視線は、彼女らしい純粋さと、どこか不安げで儚いものを孕んでいて、ルカは唐突に不安になった。

「わたくし、グミちゃんのことは嫌いではありませんわ」

それだけはきっぱりと断言すると、グミの瞳が揺れた。
正直に言った方がいい気がして、ルカは必死で自分の内にある思いをかきあつめて、できるだけそのまま言葉にする。

「寧ろ、好きな方だと思います。けれど、貴女と……がくぽさんが一緒にいるのを見ていると、何だか、その……」

けれどどうしてもむかむかする胸の内を上手く表現する言葉が見つけられなくて、ルカはそこで言い淀んだ。
それを聞いていたグミには、しかし何やら伝わったようで、グミはさっきよりも安心したような表情で1つ頷いた。

「私がお兄ちゃんに抱きついてるの、嫌だったんですね!」

何故かその口調が嬉しそうで、ルカは少し混乱したが、それは事実だったので躊躇いつつも頷いた。
するとグミは、ぱっと嬉しそうに顔を輝かせて、それからハッとしたように口元を押さえた。

「ごめんなさい、訳わからないですよね。でも、……それを聞いて、安心しました」

ルカにはやっぱり理解できなかったが、取り敢えず相槌を打っておく。
グミはそこで少しためらうようなそぶりを見せてから、ルカからそっと視線を外して前を向いた。

「あの……笑わないで聞いてくれますか?」

「……?」

ルカが無言で先を促すと、グミはどこか遠くを見るようにして喋り始めた。

「私、なんていうか……抱きついてると、安心するんです。あの、誰が相手でも」

「そう……なの?」

「あっ、変な意味じゃないですよ!ただ、この人は確かにここにいるんだって、抱きつくのを許してくれるくらいには、或は不愉快に思わないくらいには、私の存在を認めてくれているんだって。そう感じるんです」

そしてルカを振り返ったグミに、けれどルカは無言で先を促した。
するとグミは照れたように笑って、そのまま口を開く。

「言葉じゃ安心できないんです。態度と目は雄弁だから。そうでもしないと……私、失ってしまうのが怖くてたまらない。変ですよね、インストールされたばかり、なのに」

「そう……」

グミの言葉に、ルカは戸惑っていた。
ただ、まだ打ち解け切ってもいない少女がそういう話を自分に打ち明けてくれるのが不思議で仕方なかった。
そして、その言葉には、誠実にこたえたいと思う。

「……ごめんなさい、こんな話、」

取り繕うようにグミが笑顔を浮かべてそう言うのを、だからルカは遮った。

「わたくしたちは、ソフトウェアですから、ずっと失われない事は、ありえないと思います」

ルカの言葉を、グミはただ静かに聞いている。
ただ愛おしい人たちを思う、ただひたすら居心地のいい空間を思う。その思いは、態度を窺いながらでなければ感じられないものではないのだと知っている。
喋りながら、ルカはさっき感じた虚無感の正体に気がついた。渡すばかりで、返ってきているようで返ってこない思い。

「失うのはわたくしも怖いですけれど、わたくしは少なくともこうして存在する時間を大切にしていたいと思います」

「そう……ですか」

「ええ。……わたくしは少なくとも、認めて欲しいと言いながら、相手を信じられないのは嫌ですね。一方的に貰うばかりは、ずるいと思いますわ」

グミがそっと目を見開く。息をのむ、気配がした。
ルカはくすりと、悪戯っぽく笑って見せる。

「善人じゃありませんから、わたくしだって欲しいです。……ね?」

ルカの言葉に、グミはほっとしたように笑った。少し泣きそうだけれど、見逃してあげようと思った。

「……私、やっぱりルカさんのことが好きです」

「そう?わたくしもグミちゃんのことは好きよ?」

2人で目を見合わせて、ふふっと笑い合った。

その時のグミの笑顔は、まるで花が綻んだときのように鮮やかで、今までで一番綺麗だとルカは思った。
それからグミは、またルカに抱きついてきた。

「……そうは判っても、やっぱり抱きつくと落ち着くんですよねー。ルカさん、柔らかいし」

「はい!?」

思ってもみない言葉にルカが狼狽すると、グミが悪戯っぽく笑った。

「そうと判ったら私、頑張っちゃいますよー!勿体ないとは思うけれど。……あ!私別に兄様の事は好きですけれど、そういう意味じゃないから安心して下さい!」

「何、何の話をしてるの?」

ルカの混乱などどこ吹く風で、グミはいたって楽しそうだった。

「手初めに、お姉さまって呼んでもいいですか?」

「それは構わないけれど……貴女、何をたくらんでいるの?」

「えへへ、内緒ですよーお姉さま!」

にっこりと言うよりはにやにやと描写した方が的確であろう笑顔でご機嫌なグミをルカが更に問い詰めようとしたところで、背後から声がかかった。

「さて、グミちゃんはお夕飯、ルカは帰るよ?待たせちゃって悪かったね」

2人揃って振り返れば、そこにはカイトとがくぽの姿。
真っ先に反応したのはグミで、兄様!と叫びながらがくぽのもとに突進していった。今度は抱きつかない代わりにその手を握っていて、それはやっぱりルカの心にチクリと刺さった。けれど、それはついさっきまでのものよりは随分軽い些細なもので、そう言えば虚無感の正体は判ったけれど、嫉妬は何だったのだろうとルカは心の中で首を傾げた。

それじゃあ、と挨拶をするカイトに合わせてお辞儀をしていると、グミから声がかかった。

「また、いつでも来て下さいね、お姉さま!」

その一言にカイトは一瞬目を見開いてから思わず噴き出し、がくぽは固まった。

ルカにはその反応の理由はいまいちよくわからなかったけれど、取り敢えずグミと仲良くなれたのは素直に収穫だと思った。
青いのに文句を言うのは今回は勘弁してやることにする。


その晩、ルカはふかふかの布団の中で、次にグミに会ったら取り敢えず問い詰めておこうと思いつつ、いつの間にか殆どなくなった胸のむかむかに首を傾げるのだった。


◇ ◇ ◇
以下妄想蛇足↓
取り敢えずグミがルカの事を「お姉さま」と呼んだのを問い詰めたくてもできないへたれがっくんは、ルカが布団の中で首をかしげている頃1人もんもんと考えているのではないでしょうか。
「グミがルカをお姉さま……!?ってことはちょっと待てあれだ、拙者はグミの兄だから、だからつまり拙者とルカは……っ」
考えるんですが想像の中ですら「夫婦」と言う単語を口にできないがっくん。彼は妄想の中ではルカから敬称が取れるんです。本音ですね、わかります。でも実際呼べないところががっくんががっくんであるところ。
そしてルカはルカで、グミのがくぽに対する振る舞いが羨ましくて、羨ましい自分が認められなくて、でも真似したくて……で悶々しているのでした。

以上↑妄想蛇足でした。以下真面目にあとがき蛇足。
カイトの、ルカはいいお姉ちゃんに~の真意は、がくぽのルカに対する見解(フィルター透過済/笑)にちらっと出てきた「深入りしないけれど優しい」につきます。客観的に見て、甘やかしすぎず、優しく返す。対応的にはメイコにも不可能ではないですが、メイコが接するとすれ違いが出るのと、カイトの嫉妬が入るので(笑)却下。
ミクとリンは無条件に受け入れてしまおうとすると言うか、同情っぽいものが入ってしまうので。
レンには、色々な意味で無理ですので(笑)。我が家の場合はそんな感じです。
グミの考えの根本は、またちゃんと書けたらいいなあと。(願望系)

以上です。お粗末さまでした!
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