"> 解明Polka 風邪を引くのは何も悪いことばかりでもない 忍者ブログ
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某歌ロイドにはまった人がちまちま書いているようです。ブログ名で好きCPがわかる罠

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……と、散々悪態をついている(現在進行形)管理人が言ってもあまり説得力はありませんがまあつまりはそういう話です。

先日の、ルカが風邪を引いたあの話の後日談です。タイトルも一応対。
ぶっちゃけ最後のシーンが書きたいがために考えたお話です。
長さは比較的短めですが、卑怯にも会話で嵩をかせいでおります。

ルカ様デレのターン。あとカイメイはもう夫婦でいいと思う。
にしても最近ルカ様のキャラが定まらないorrz
両片思い万歳!周囲はみんな気付いているのに本人達にだけ自覚がないという、そういう限定的鈍感が非常に萌えます。ていうかおまえらもうくっついちゃえYO!

というわけでぽ→←ルカです。短い本編は続きからどうぞ!




ふと意識が浮上して、がくぽは眠りの淵から覚醒した。

目を開けばそこは見慣れた自室で、けれどがくぽは何故自分がこうして床についているのかわからなかった。
何せ部屋の中は射し込んでくる日差しですっかり明るくなっていて、その角度から今は丁度正午ごろであることがうかがえる。普段ならば絶対に起きている時間。

しかも何故か身体は熱く重たくて、あまりの気だるさに少しでも動こうとすると眩暈がする。そして一番解せないのは、視界の隅で翻り、桜色の軌跡を描く美しい長髪、見まごうこと無き愛しい人の髪。
状況が把握できずに、がくぽはただ小さく息をついた。


愛おしい熱


がくぽが動いた気配に気付いたのだろう、洗面器とタオルを持ったまま引き戸を閉じたルカは視線を真っ直ぐがくぽに向けた。その表情は何故か険しくて、普段彼女ががくぽと接するときの冷たくあしらおうとする表情とはまたどこか違う。
実際に身体を動かすことはできなかったので心の中だけで首を傾げていると、ルカは盛大に深いため息をついた後がくぽの布団の傍にあった座布団の上に座り、枕元に洗面器などを置きと焦らすように時間をかけた後、ようやく口を開いた。

「気分はいかがですか」

「……動けないのだが。熱いのに寒いし、だるい」

自分の口から出た言葉は思ってもみなかったほどに簡潔で、がくぽは自分で自分に驚いた。
しかしルカは気にした風もなく、むしろ大層呆れたような顔で答える。

「あたりまえでしょう、風邪をお引きになったんですから。……まさか、状況が判らないとか、そんなふざけたことおっしゃいませんよね?」

「……すまぬ」

「……」

深く考えようとすると、まるで思考に霧がかかったようになって記憶を辿ることを妨害する。自分の回答がルカの期限を大きく損ねることになるとはわかっていたものの、実際よくわからないものは仕方がないのでそう答えると、案の定ルカは不愉快を隠すこともせずまた盛大に深いため息をついた。

「……だから、移ったら大変だと忠告しましたのに」

その言葉は覚えている、とがくぽはふいに脳裏に浮かび上がった記憶のひとこまを逃さぬようにと掴み取った。
先日、ルカが風邪を引いたと聞いて看病をしに行った時に言われたのだ。

ちゃぷちゃぷと水の揺れる音がしたかと思うたと、額の上ですっかり温くなっていたタオルが取り上げられて、代わりの冷たいタオルがのせられた。それが心地よくて、意識する前に瞼が閉じられた。
ルカの言葉と態度は普段に増してぶっきらぼうだったが、それに反して動作はとても丁寧で、そこから滲み出てくるような優しさに、がくぽは思いあがりたくなった。

「……今朝方です。わたくしの風邪が直りましたので、看病のお礼を言いに来たのです」

「そうか、それは良かった」

何と相槌を打てばよいのかわからなくて、がくぽは取り敢えず差し支えないようにそう言ったが、それを聞いたルカはハッとしたように目を開き動きを止めて、それからふいと顔を背けてしまった。

「玄関前で応対した貴方は、完治の旨を伝えたわたくしに、今と一言一句同じように返されて、それからわたくしにもたれかかるように意識を失われてしまったのですわ」

「……」

「ですから、仕方がないのでこうして床に寝かせて、看病差し上げているのです」

どうやらがくぽの相槌は最大の地雷だったようだ。けれど幸いルカは会話をつづけてくれていたので、がくぽは回らない頭で細心の注意を払いながら受け答えをするように努める。

「そうか……ルカ殿が運んで下さったのか」

「そうです。女の力を舐めないでください」

「かたじけない」

「嘘です」

「……」

「わたくしはどうしていいかわからなかったので、めー姉様と……青いのに、手伝っていただいたのです」

「……そうか」

「ですから、良くなったらしっかりとめー姉様にもお礼を言ってください。雑炊や……このタオルも用意してくれたのは姉様ですから」

「心得た」

「それから青いのも……わたくしはアレは気に入りませんが、礼儀のなっていないのはもっと嫌ですから。貴方を運んだのは青いのです」

「うむ、拙者も礼は重んじる故、心配には及ばぬよ」

ぽつりぽつりと話すルカは普段がくぽの前に居る時に比べてとても饒舌だった。

視線は大体がくぽの顔の横辺りにあるのだが、ふと言葉が切れるたびにあちらでもないこちらでもないと彷徨って、そうしてまた言葉を発しては、落ち込むように目を伏せる。がくぽの返答も必要としないような、まるで独り言のような言葉をそうして連ねて行くルカは、しかしその答えに口を噤んだ。

それから先ほどよりも長い間視線をさまよわせた後に、消え入りそうな声が、微かに震える形のよい唇から零れ落ちた。

「だから、早く元気になってください」

その言葉は、ふわりと浮いて飛んで行ってしまいそうなほど儚くて、けれども幾度もがくぽの胸の内で反響した。

「……うむ」

「後味が悪いと、言ったではないですか」

「……うむ」

「本当に、突然倒れてしまうから、心配したではないですか……!」

「……すまなかった、ルカ殿」

唇だけが僅かに震えていたのが、いつの間にか全身に広がったようで、何か堪えるようにきゅうと握りしめられた掌に、あれだけだるかった身体が勝手に動いた。
するりと持ちあがった手は、吸い寄せられるようにルカの頬をそっと覆った。

弾かれたように顔を上げたルカの瞳は潤んでいて、それがとても愛おしくて、がくぽはそのままそっとルカの顔のラインをなぞるように手を動かした。いつもなら拒んだであろうルカの手は、確かにがくぽの手を払うために反応していて、けれどもそれは実行に移されることはなく、その手は中途半端なところで止まったまま固まっていた。

その反応に、がくぽは益々思いあがりたくなる。

風邪なんて引くものではない、けれどもこの熱のお陰で今の状況が出来上がったのだと思えば、それすらも愛おしく感じられた。
ばか、と微かに紡がれた言葉に思わず微笑んで、今はただ病人という立場をたてにこの心地好い状況を享受しようと、そう思った。


◇ ◇ ◇


「……あらまあ、この子たちは本当に、もう……」

襖を開けて眼前に広がった微笑ましい光景に、メイコは呆れつつも思わず頬が緩んでしまうのを自覚した。
立ち止まったメイコを不思議に思ったのかひょいと回り込んで顔を出したカイトに、唇の前に指を一本立ててみせてから、そっと眼前の光景を示した。

それを見たカイトが自分と同じように頬を緩ませるのが何となくおかしくて、そしてそれ以上に愛おしい。
どうやら部屋のなかのほんのり甘い空気に自分も当てられたようだと自覚する。けれど今はそれは不快ではなかった。

「……様子を見に来たつもりだったのにね……起こすのもなんだか気が引ける」

「そうね。お夕飯の時間になったら、2人分用意して運んであげましょうか」

どちらともなく顔を見合わせて、くすりと笑い合う。


夕日の温かい色の光に包まれて、布団の中で眠るすっかり顔色も良くなってきたがくぽと、それに寄り添うようにして突っ伏して寝ているルカ。
2人の表情は穏やかで、その手は軽く重ねられていた。

その光景をもう一度見つめてから、メイコはそっと襖を閉じた。
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